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ルーズリーフに書かれた練習メニューを見て、舜斗の表情がピタリと固まる。そういえばこういう仕返し方法だとこの子を巻き添えにすることを失念していた。ごめんねだね。
「swim 50×15 (40sec) S1 hard……?きっつい」
気持ちを隠すことなくげっそりとした様子の壮大。
うん、仕返し自体はしっかり効いている。
「まあ。春季も終わったし、気合い入れていきましょう」
「俺の腕なくなっちゃう。せめて60sec!」
「…………」
お願い!と手を合わせる壮大と、無言で眉毛の端っこが下がる舜斗はどこか対照的だ。やっばい、舜斗これ、捨てられた子犬みたいになってない?
「……わかった。舜斗に免じて50secで」
「シュンちゃん!もっと悲壮感たっぷりにして!」
壮大が舜斗の両肩を掴んで大きく揺らす。ちょっと、全然抵抗しない1年生になんて事するの。「……よく分からないですけど、たぶん壮大くんのせいですよね」人見知りの新人は、こういう時に静かで冷静だ。
その物言いに諦めたようで、大袈裟な泣き真似をしながら壮大が入水したのを見て、そっと舜斗に耳打ちする。
「S1じゃなくてFrでもいいよ?舜斗こそ冗談抜きで腕なくなっちゃう気がする」
「大丈夫です。大学じゃこれくらいのサークルでやる所あるって聞くから」
「……………15本はね、流石にやりすぎたと思っているのよ」
「うん。でも大丈夫です」
そう言って踏み台に足をかけて、ピョンっと軽く水に飛び込む。まだ肌寒い季節だというのに、この子は思い切りがいいしストイックだし……と見えているだけで、思っている事がちゃんと言えなくて無理させていたらどうしよう。壮大みたいにもう少しフランクに来てくれるようになると、安心するなぁ。
「A先輩、ウォームアップ出して〜」
「んー、はい。じゃあ……30秒前ー」
ぽーっと考え込んでいたところに壮大の声がして。短水路のプールサイドに置かれたクロックに視線を向けて、ちょうど長針が真下を過ぎたところでカウントを始めた。
壮大と舜斗が揃ってゴーグルを付ける。
長針は45度の位置にきた。
「今日も張り切って行こーう。10秒前、
5秒前………3秒、よーい、はいっ!」
腰掛けた踏み台がガタリと揺れる。2人が同時にキックして、あっという間に5メートルラインを過ぎていった。
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祐莉 - お久しぶりです! 更新いつまでも待ってます。 (2022年10月21日 20時) (レス) id: 141db64209 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» ゆっくり更新になりますが、是非お付き合いください😌💓水とお友達のびふぁ君たちを書きたかった…! (2022年10月8日 2時) (レス) id: 8cbda2bab5 (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - 新しい小説〜!これから、楽しみですぅ( ꈍᴗꈍ)水泳部。。。想像しただけで、よだれが。。。(笑) (2022年10月7日 8時) (レス) id: 9b3b932bb4 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 祐莉さん» お久しぶりです。またまた私でなんだか申し訳ない(笑)ゆっくり更新していきますので、気長にお付き合いいただければ嬉しいです(^^) (2022年10月3日 4時) (レス) id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - BESTY さん» はじめましてこんにちは!色々とお読みいただいているようでありがとうございます(^^)ゆっくり更新にはなりますが、楽しんでいただければ嬉しいです。 (2022年10月3日 4時) (レス) @page12 id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年9月30日 22時