検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:6,712 hit

*Ability1 ページ1

.





「坂田くん、補助お願い」



その声に電子カルテを覗いていた顔を上げれば、ちょいちょい、と手を振る年輩看護師の佐藤さん

「今行きます」と電子カルテを閉じて立ち上がった




「大畑さん元気?今からお風呂入ろうかね」

「え?..お風呂は、今日はちょっといいです」




大畑 隆信(たかのぶ)さん、今年83になる男性患者さん

元々は家での転倒をきっかけに来院、検査で右の第3から第5肋骨までの骨折と腰部打撲が分かり入院。既往歴には高血圧、狭心症、心不全..歯は総入れ歯

となんともまぁ、たくさん抱えた御老人だ




「良くない良くない、もう4日も入ってないでしょ」

「そうは言っても、動くとたるいんですよ..」




丁寧な性格なのか、遠慮しているのか、俺たち医療従事者に対してはいつも敬語を外さない

佐藤さんも苦笑いをして「今は?息苦しくはない?」と彼の肩を軽く擦りながら聞いた

朝の申し送りで彼が夜、息苦しさであまり眠れなかったそうだと言っていたし、肋骨が折れているんだから肺を圧迫していても可笑しくはない




「じゃあ、体拭くだけにしときます?」

「あぁ、それなら、あぁいいかもしれないです」

「じゃあ準備してきますね」




静かに病室を出て、必要な物品を用意すべく空いている包交車を取りにステーションまで戻る

ずっと黙っていた俺の提案に少し戸惑いながらも了承してくれた大畑さん

本当にいいのかって、疑問に思う。清拭も大事、洗髪だって4日もしていない、お下を綺麗にした方が感染症の予防になる

彼に今1番必要なのは、欲しているのは、なんだろう




「坂田くん、成長したね!」

「...ぇ、そう、ですかね」

「初めて来た時は実習しに来たのかと思ってたよ、こんなに立派になっちゃって!」




俺の肩をバシンと叩いて「後よろしくね」そう言って手をひらひらさせて別の病室へ入っていった佐藤さんに思わず苦笑い


看護師として働き始めて早4年、やっと仕事が板についてきたというか、慣れてきたというか

専門学校を卒業してきた人に比べたら大卒の俺の技術はかなり低かった

悔しさとどうしようもなさが心に巣食ってただただ患者との距離を縮めるのに必死だったあの頃が懐かしく感じられる




「そういえば..明日からか、実習生来るのって」





.

*Ability2→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ふぁん(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!!考える力がやばいですね?!←とにかく大好きです!!応援してます!! (2018年7月4日 6時) (レス) id: f99b176aca (このIDを非表示/違反報告)
おもちちゃん?(プロフ) - もくさんの作品って感じですごく好きです!!新作も面白くなる予感しかしません!!これからも頑張ってください!! (2018年5月15日 23時) (レス) id: 3548c41063 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もく。 | 作成日時:2018年5月12日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。