同じ女同士だから。 ページ8
この日以降、彼が校門の前にいることがやけに多くなった。私と彼の個性は特に相性がいいわけでもないのだが、活動中もよく見かける。確かに活動範囲が近いのもひとつなのだが。
「今日は何用？私今日完全オフなんだけど」
｢いや、知ってるけど。｣
｢じゃあなんでいるの、先輩達にあの人誰〜？！って聞かれて同級生って答えるのも面倒なんだけど。｣
｢上鳴に耳郎さんと飲みに行くからって誘われたから、芋づる形式で。｣
私はそこにいていいのかも悩みどころだが、まああの2人ならいいかなと、一応上鳴に連絡だけ入れて参加させてもらうことになった。
｢私この後授業もないから、夜まで暇になっちゃったな。｣
｢じゃあ、どっか行く？｣
「いいね。貴重な休みだし思いっきりはしゃごうよ」
彼が私の終わる時間をピタリと当てて校門にいるのかは知らないけれども、後々になって私の友人から全て聞いていたとわかるのだが。
｢心操も非番とか珍しくない？まあ最近はデクとダイナマイトとショートが平和の象徴に近い役割してるから、治安も安定してきたけどさ。｣
｢やっぱりあいつら見てると羨ましいよ。｣
「まあ、心操のスタイルはイレイザーヘッドみたいな感じだからね。」
彼はもう吹っ切れているのだろうけど、ないものねだりはお互い相変わらずなようだ。
私の個性も0から何かを作り出すのではなくて、1がなければ個性を生かしきれない。環境に大きく左右される個性だ。
「そういえばAもこの間雑誌の表紙飾ったって言ってただろ。」
「あー、もしかして買った？」
「グラビアページあるのは気まずくて買える訳ないだろ。」
｢あはは、よかった｣
女の子たちなら100歩譲ってまだいいとは思うけれども、さすがに男の子に見られるのは絶対嫌だったから良かったとほっとする。
電車で喋っていれば、不意に服の袖を引っ張られる。私はスマホをおもむろに取り出して後ろの状況を見れば、女子高生らしき子が痴漢されている。心操は...ヒーローとはいえ痴漢されたことなんて異性に知られたくはないだろう。私は現場を写真に収めて、私と彼女の場所を反転させる。
逆先A、個性あべこべ。上を下に、右を左に、全てを逆にすることが出来る。
私はおじさんの腕を思いっきり掴み他の客に目立たないようになるべく小さな声で｢次の駅で降りてください。｣と、言った。ちらりと心操の方を見れば状況を察しているようで、女の子を落ち着かせているようだった。
ありがとう→←あなたのその行動ひとつで私がどれだけ動揺すると思っているの。
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作者名：爆蜜柑 | 作成日時：2024年2月2日 18時
