「私と世界、どっちを取る？」【心操人使】 (ページ21)

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目を開けるとそこは病院だったページ21

目が覚めると白いベッドの上に寝ていた。「いって」起き上がろうとすれば肋が痛む。そうだ折れてたんだ。

「心操、来てくれてたんだ」
「...まずナースコール押しなよ。」
「そうだったね」

こんなに動揺している心操を見るのは久しぶりかもしれない、いや初めてだったり。オレンジ色に輝いた太陽がレースの薄い色のカーテンに透けているのを見れば、あぁ生きてる。なんて思ってしまう。

それと同時に慌ただしい音が聞こえ、ノックもなしにガラリと病室のドアが開かれた。

「逆先さん！！！」
「私何日くらい寝てましたか？」
「まる2日寝ていたんですよ、それに腕の傷、多分痕残ります」
「...よかったぁ」

ということはあの傷は少年少女の一生の傷として残る事は回避したってことだろう。ただ傷が残っちゃうと、この先の結婚に支障が出ないかというのは少し気になるところではあるが。とにかく今はヒーローとしての責務を全うしていたことにほっとした。

「元気に喋れてますし、記憶の混濁も無さそうですね。私は今から医師を呼んできます、お大事に。」
「ありがとうございます。」

私はお礼をし、再び心操と向き合うことになる。静かな病室に時計の針の音が嫌という程響いていた。

「腕の傷、一生残るって言われてなんで安心した？」
「中学生の男の子と女の子に残ったら一生ヒーローに付けられた傷として残っちゃうよ。」
「かもしれないけど！！Aはヒーロー以前に」
「関係ないよ。私はヒーローとしてそうあるべき姿をなぞっただけ。」

私じゃなくて心操の方がよっぽど私の体のことを気にしてくれる。そんな優しさが嫌という程私の恋心に突き刺さって取れなくて胸がぎゅっと苦しくなる。

「心操、あんたは優しすぎるだけだよ。その優しさはいつか仇になって帰ってくる、私なんかにそんな優しくなるな。」
「俺別に優しくないよ。」
「真面目な話してるんだけど。」
「...」

彼が真剣な眼差しで私になにかを言おうとした時、扉がノックされ病室に医師が入ってくる。彼は「...また来る」とだけ残して、病室を去ってしまった。

「それじゃあ検査行きましょうか。今の彼は彼氏さんですか？」
「いいえ、でもいずれそうなったらなんて思ってます。」
「青いですね、それにもうすっかり元気で安心しました。」

彼と少し気まづくなったけれども、ひとまずは生きていることに感謝するべきなのだろう。私は車椅子に乗せられて検査に向かった。