醒めない夢 ページ11
「ここで寝るなって、A...、A！」
うっすらと声が聞こえてくる。誰の声だ？あれここは、夢？それとも現実？
｢やっば寝てた！｣
｢とりあえず水飲みなよ。｣
急いで腕時計を見れば、既に日を跨いでいた。やっちゃったなぁ、なんて思いながら懐かしい夢の欠片を拾い上げてみる。
「懐かしい夢を見たんだけど、心操って大学の校門の前にいた時女の子達に声掛けられなかったの？」
「かけられたけど、リーバス待ってるって言ったらあんま声掛けられなくなったけど、なんかやらかしたの？」
「あー、なるほどね。いややらかしては無いけど、うん。まあそういうこと。」
「A明日は？」
彼もスマホを見て私に確認を取ってくれる。明日は普通に仕事だが、もう少し飲んでいたい気分ではある。
｢仕事だけど、まだ飲み足りないんだよね。そっちは？｣
「俺も仕事だからそろそろ帰んないと明日しんどい」
｢相変わらず寝付き悪いもんね、じゃあ今日はお開きにしようか。寝ちゃったし今日は私奢るよ。｣
｢貯金するんじゃなかったっけ。｣
「大丈夫だって、お金にはそんな困ってないからさ」
そういって伝票をかっさらっておあいそをお願いした。鞄を持ち忘れ物がないか確認するけれども特にはなかった。次会えるのはいつなんだろう、とぼんやり考えながらまだ肌寒い外に出る。
「送ろうか？」
「明日しんどいんじゃなかったの」
｢いや、一応聞いてみただけ。｣
「じゃあ気持ちだけ貰っておくよ。ありがとうね。」
私は彼に素直に甘えることすらできない、離れたくないなんて気持ちがもし微塵でも彼に伝わってしまったら、なんて考えるだけ恐ろしい。プロになるまではと締め付けていたこの想いは、プロになってしまい取り出す瞬間を見失ってしまったのだ。
結局私に勇気なんてなくて、ネオンがギラつく街中を辿り家に帰った。これならまだ学生時代に溢れさせてた方が1種の淡い思い出で終わったのに、なんてね。
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作者名：爆蜜柑 | 作成日時：2024年2月2日 18時
