30 ページ31
.
目を覚ましましたよ、って看護婦さんの言葉にAはいち早く立ち上がり病室へと入って行った。
「お熱いこと…」
ちょっとだけ二人にしてやろっかなとも思ったけど、顔見て退散した方が早いと考えて後に続く。
一歩一歩足を進めると、Aはベッドの傍に座るだけで。
月明かりに照らされたセフンは、
静かに涙を流していた。
「ごめんね…ごめんね、セフン。」
謝るAに反応しないセフン。
だから手でも握ってやれって言ってんのに。
つーか、何で泣いてんだよ。
俺に気付いても力無く目を伏せるだけ。
いつもの高飛車なセフンじゃなくて拍子抜けする。
「おい、大丈夫かよ？とりあえず大事には至らなかったみたいだから俺は帰るよ。ほら、手握って。」
Aを促して手を握らせたけど、
セフンの表情は変わらなかった。
この空気に居ても立ってもいられなくなって脚をムズムズさせる。
「全治二週間だっけ？ほら、その間少し休めばいいよ。お前一人でずっと頑張ってきたんだろ？」
俺だけがペラペラ喋って、また沈黙。
無理だ、耐えられない。
じゃあ、って立ち去ろうとしたらセフンが口を開いたから思わず体勢を戻す。
「戻る場所、あんのかな。」
戻る場所？
あのステージこと？
「あるだろ。あそこはお前しか立たせないって言ってたよ、ルハンさん。」
「それは…今までは、俺しか居なかったから。」
「や、そんな事ねーよ。やっぱあそこはお前の為のステージだなって思うし。うん。」
「ただでさえ…練習しないとすぐ忘れちゃうのに。」
しおらしいセフンに調子が狂う。
何でAもフォローしないんだよ。
ああああ、と頭を掻いてまた一歩近づいた。
「そんな顔してるとAも余計な心配すんだろ？ほら、顔上げて！」
「会いたい、」
「はっ？」
「…会いたい。」
会いたいって、誰に。
Aはここに居るし…親とか？
「分かった。呼ぶからちょっと待ってね。」
そう答え、携帯を取り出すA。
誰に掛けんの？
「もしもしオッパ？セフンが、待ってる。うん。うん。」
…オッパ？
オッパって。
もしかして、ルハンさん？
俯くセフンとAの顔を交互に見る。
え、、は、、？
ルハンさんに、会いたい…？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2257人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こうめ(プロフ) - 解説を読んでからまたもう一度物語を読み直して涙がでました。ファンにとって彼らの才能も努力も全部ひっくるめて大好きな愛の形が描かれていてとてもすきです (2016年5月4日 0時) (
レス) id: 7e852f53ef (このIDを非表示/違反報告)
toliko(プロフ) - 一言。大好きです (2016年2月18日 23時) (レス) id: cf61cbd4ac (このIDを非表示/違反報告)
呉空(プロフ) - 凄く感動致しました(;_;)解説を読んだ後には再び感動しもう一度読み返しました！かぴ様の書く作品は色んな意味で心に響く感動的な話でいつももう一度読みたくなります！かぴ様の作品凄く大好きです！いつもありがとうございます(;_;) (2015年12月21日 3時) (レス) id: 168c574e0d (このIDを非表示/違反報告)
荷娜(プロフ) - EXO-LはEXOの頑張っている姿(影)に惚れているというのが遠まわしに伝わって感動しました！あ、違ったらごめんなさい…長々とすいません！これからも応援しています！！！ (2015年12月11日 17時) (レス) id: 4d87dd0cc6 (このIDを非表示/違反報告)
荷娜(プロフ) - 社長様から読まさせていただきました！つまりEXOの不安よりもEXOの輝きが勝つ！という風に感じて、例えるのが上手で小説に吸い込まれました。結局、セフンは踊れなくなったのでしょうか？踊らないのでしょうか？ (2015年12月11日 17時) (レス) id: 4d87dd0cc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かぴ
| 作成日時：2015年11月16日 1時
