17 ページ18
.
…じゃあお前は、何であいつを拾って育てた？
マジで水ちょーだいって言うルハンにペットボトルごと手渡すと、雑だなって笑う。
「本当はさ、お前と出す予定だった店で雇いたかったんだ。ほら、顔も良いだろ？ちょっと仕込めばデカくなるかなって。」
…何を今更。
俺は再び瓶を傾ける。
「でも、あいつは中々育たなかった。人が五回やれば覚える事を十回やっても出来ない。時間だけが過ぎて行く。」
「………。」
「その代わり、同じ事を百回やれる根性を持ってた。」
あー俺のセフン、って。
ルハンは心底愛おしそうに話す。
「そのうち俺は、あいつを育てる時間と金を惜しまなくなった。良い環境で最高のレッスンを受けさせて、出来るまで百回でも二百回でも付き合ったよ。でもな、ミンソク。」
「…何だよ。」
「お前をそれに付き合わせる訳にはいかなかった。」
……！！
「当時は完全なる俺のエゴだったんだ。華開くかも分かんねえようなガキ一人育てるのに、お前の時間まで犠牲にする訳にはいかなかったんだよ。」
「じゃあ…そう、言えば良かっただろ。」
「言ったらお前は待ったか？」
ルハンに鋭く芯を突かれ、言葉に詰まる。
あの当時、俺は………
「お前は早く店出したいって、ずっとそう言ってたろ。」
「そりゃ、そうだろ。資金もあって知識もあって箱もあって…」
「あの時。」
俺の言葉を遮るルハン。
「あの時お前が焦って無かったら。」
…俺が、焦ってなかったら？
「セフンは今頃、そのステージで踊ってたよ。」
俺の店の小さなステージを指差し、
お前と俺の店のな。って付け加えた。
一気にグラスを傾けて立ち上がる。
「ジョンインはお前からのプレゼントだと思って有難く頂く。大事に育てるから安心して。そう易々とセフンの座はあげられないけど。」
「あいつは天才だからこそ、自分の実力を過信するタイプだ。どっかの誰かみたいにね。」
「そろそろ、煙草やめなよ。似合わない。」
多すぎる金と言葉を置いてルハンは颯爽と出て行き、俺の指に挟まる三本目の煙草の灰はポトリ、と床に落ちた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2257人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こうめ(プロフ) - 解説を読んでからまたもう一度物語を読み直して涙がでました。ファンにとって彼らの才能も努力も全部ひっくるめて大好きな愛の形が描かれていてとてもすきです (2016年5月4日 0時) (
レス) id: 7e852f53ef (このIDを非表示/違反報告)
toliko(プロフ) - 一言。大好きです (2016年2月18日 23時) (レス) id: cf61cbd4ac (このIDを非表示/違反報告)
呉空(プロフ) - 凄く感動致しました(;_;)解説を読んだ後には再び感動しもう一度読み返しました！かぴ様の書く作品は色んな意味で心に響く感動的な話でいつももう一度読みたくなります！かぴ様の作品凄く大好きです！いつもありがとうございます(;_;) (2015年12月21日 3時) (レス) id: 168c574e0d (このIDを非表示/違反報告)
荷娜(プロフ) - EXO-LはEXOの頑張っている姿(影)に惚れているというのが遠まわしに伝わって感動しました！あ、違ったらごめんなさい…長々とすいません！これからも応援しています！！！ (2015年12月11日 17時) (レス) id: 4d87dd0cc6 (このIDを非表示/違反報告)
荷娜(プロフ) - 社長様から読まさせていただきました！つまりEXOの不安よりもEXOの輝きが勝つ！という風に感じて、例えるのが上手で小説に吸い込まれました。結局、セフンは踊れなくなったのでしょうか？踊らないのでしょうか？ (2015年12月11日 17時) (レス) id: 4d87dd0cc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かぴ
| 作成日時：2015年11月16日 1時
