雨の日の君 (ページ2)

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名前を教えてページ2

イケメンが立っていた。

彼は優しい笑顔で私に傘を差し出した。

『大丈夫ですか？風邪ひかれますよ？』

「えっ...あ、ありがとうございます...」

『どうされたんですか。こんな雨の中1人で』

彼は聞いてきた。

初対面なのに、結構ズケズケ聞いてくるな、

と思いながら、

「なんでそんなこと聞くんですか」

心のままに言った。

すると彼は表情を変えずに、

『僕、人が悲しそうにしてると、放っておけな

いんですよね。例え初対面でも。』

と言った。

こんなに優しい人初めて見た。

だいたい私に大丈夫？なんて言ってくる人は

同情心で話しかけてくる。

でも、不思議なことに、彼から

"同情心"というものは感じられなかった。

「実は私...」

事故のことをすべて話した。

すると彼は、涙を流していた。

『酷い....ひき逃げだなんて...』

なんて心が綺麗な人なんだろう。

「あ...」

雨が止んだ。

『僕はあなたの味方ですよ。』

そう彼は微笑んだ。

『それでは。お大事に。』

彼は傘を閉じ、ペコリ、と

お辞儀をして、去ろうとした。

「あの！」

私は反射的に叫んだ。

『なんですか？』

「名前！！名前はなんですか！？」

『僕の名前...ですか？』

「はい！そうです！教えていただけませんか？」

『そうですね....カイです。』

「カイさんって言うんですね！

私はAです！！」

彼は驚いた顔をしていた。

『Aさんですね、分かりました。』

彼はそれでは。

と言い、今度こそ去っていった。

私は彼に恋をした。

彼が何なのかも知らずに。