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イノシシ頭の彼が雪を踏む度に

ギュッ

と音がする。



「なんで俺がそんなことしなきゃいけねぇんだよ」


と、知らん顔された所を


『お願いします!親分!』


という言葉で言いくるめて今に至る。



「ほら。ここまできたら後は分かるだろ?」



周りを見れば
雪化粧で様変わりしているものの、見慣れた風景にほっとした。


『ありがとうございます。』

「べつに。子分を助けるのは親分の務めだからな!」


そう言って得意げに鼻を鳴らす彼に笑みがこぼれた。

久しぶりだ。

心から笑うのは。



「なっ!!!」

『?』

「笑うんじゃねぇ!!ほわほわすんだろうが!!」



彼を少し怒らせてしまったみたいだけど。。。



猪くんと別れて
実弥さんの屋敷に戻った。


中に入るのを躊躇してしまう。

怒られるかもしれない。


何も言わずに2日間も開けるのはおろか
1日だって、半刻だって空けたことなどない。



恐る恐る戸を開けると

ドカドカと慌てて廊下を走る音が聞こえた。


そして、久しぶりに実弥さんの顔を見た。


本当に久しぶりだ。



その久しぶりが、こんな形になったことはとても苦しいのだけれど。



私は咄嗟に頭を下げた。



「小豆を買いに出ましたら、道に迷いました。すみません。」


顔をあげると実弥さんは私に背を向けていた。




「っ。。。。お前の作るおはぎなんか、一生食いたくねぇ」


そう捨てるように言葉を吐いて、
実弥さんは部屋へと戻って行った。



涙がこぼれた。


彼はおはぎも作れなかった私に対して怒っていたのだ。



私が留守にしたことなんて
少しも気にしていなかったのだ。


なにが怒られる。。。

だ。



心配されるような間柄では無かったではないか。

人は心配するから、怒るのだ。

勘違いもはなはだしい。

自分が嫌になる。

惨めだ。


あの雪の中で感じた惨めさよりも

さらに

深く

強く

そう思った。




私の存在価値は何なのだろう。

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作者名:あい | 作成日時:2020年12月27日 17時

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