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その日の夜は
ひどく寝つきが悪かった。
脈が速くて
苦しい。
意識もぼんやりとしてきて
冷や汗が止まらない。
治ったはずの背中の傷から
何か、得体の知れないものが身体を巡るような。。。
『実弥。。さん。。。』
小さい声のせいか、届かない。
苦しい。
私が、私じゃなくなるみたい。
そして、夢を見た。
実弥さんが泣いている夢。
私の前では泣かなかった彼が、目の前で泣いていた。
屋敷の寝所で
ぽつんと1人。
少し、痩せたかしら。
声は聞こえないが、何かを叫んでいる。
握った拳には血が滲んでいる。
耳元で囁く声がきこえる。
「あいつは稀血だ。取り込むんだ」
不愉快な声。
あの日に出会った、医者の声に似ている。
頭の奥で鳴るその声に
脈が早くなるのが分かった。
苦しい。
嫌だ。
何が起こっているのか分からない。
ふいに
「俺を置いていかないでくれ」
そんな弱々しい声が聞こえてから
うっすらと視界が拓けた。
目の前には実弥さん。
私の手を握ってくれていた様だ。
私の。。。
手。。。。
いつの間にか爪が伸びて
先端が尖っている。
血管が浮き出たその手を見て
嫌でも分かってしまった。
『実弥さん。私。。。鬼だったのね』
全てのことの辻褄が合った。
私は鬼だったのだ。
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作者名:あい | 作成日時:2020年12月27日 17時