風【不死川実弥】 (ページ14)

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｢お嬢さん。どこへ行かれるのですか？｣

声の方へ振り返ると
白いハットを被った男性が月明かりに照らされていた。

月のせいなのか
その顔は青白く見えた。

私の心臓がドクンと音を立てる。

誰だろう。
この人は。

『家に。帰ります。』

夜風が頭を冷やしてくれた。

家に帰ろう。

｢怪我をされているようですが。。。？｣

『え？』

見ると、着物が血に染っていた。

あの時の背中の痛みは誰かに切られた痛みだったのか。

幸い、痛みはもうない。

｢実は、近所で開業医をしております。よければ、お手当て致しましょうか。｣

『でも、私、お金を持っていませんので。。。』

財布は持ってきていない。
それに、実弥さんのお金を使うのは間違えている気がして。

｢医者の役目です。気にしないでください。｣

柔らかく微笑んだ彼に
心臓はずっと脈打っている。
なんだか、恐ろしい人。

それでも、私を抱き抱えると颯爽とあるく様に
妙な安心感が湧き上がった。

彼の病院につくと
看護婦が私の身体を綺麗にしてくれた。

背中に大きな切り傷があるようだが
塗り薬で治るという。

どろりとした液体を傷口に塗られ
包帯を巻いてもらったあと

｢念の為、採血をしましょう。｣

そういって血を取られた。

その後、どうやって戻ったのかは分からないが、気づいたら実弥さんの屋敷の前に立っていた。