花恋2

53 ページ3

放課後。




「馳さん、婚約者がいらっしゃるんですね」




生徒会室で近衛くんが明るい声で話した。




「あぁ、そうだよ。」




文化祭の予算組みをしている手を止めて
天馬くんを見ると、柔らかい笑顔を浮かべている。



「もう顔合わせはなさったんですか？」

「あぁ。つい先日ね」

「そうなんですね。何かお手伝い出来ることがあれば、仰って下さいね。」

「ありがとう。」





視線を資料に戻すと、近衛くんが、私の前にコーヒーを置いてくれた。




『ありがとう』

「Aさんも、幼馴染みが婚約なんて、少し寂しいですね」




息を呑む。


まるで、私の心が見透かされてるようで。



天馬くんを見ると目が合った。


その目からは感情を読み取ることが出来ない。





『でも、いい人そうでお似合いだったよ。』




慌てて感情を作って言うと

驚いた様子の天馬くん。



「どこで見たの？」

『顔合わせで食事してるお店を通りかかってね。そこで。』

「そうだったんだ。」

「どんな女性だったんですか？」

「ちょっと。、近衛。」

『純粋で、芯の強い女性。に、見えたよ。ほんと、お似合い。』





お似合い。



天馬くんには、江戸川さんのような女性が似合う。



口に出すと、それは納得のいくもので。



胸の痛みが少し消えた気がした。




「Aには言われたくなかったよ」




はっと、顔を上げると傷ついたような、怒っているような天馬くんの顔。



前髪をかきあげると、




「今日は先に失礼するよ」





そう言って出ていってしまった。

54→←52

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す