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そうであるならば、意思を譲れない以上彼らの云うことを聞く気は微塵も起きない。彼らが私の意思を無視すると云うのなら、私だって同じようにするまでだ。
望むように生きて欲しいと願ってくれた人が居た。だから、良い人間になると決めた。
こんな私を信頼してくれていた、
「何を云われようと私の答えは変わりません。お引き取り願えますか」
そう撥ねつけると、立原さんと銀さんがもの云いたげに広津さんを見る。広津さんは目を閉じ、何事かを考えているようだった。
正直なところ、このまま彼らが退くとは流石に思えない。態々黒蜥蜴の長である彼らがここまで出向いてきたのだ。このまま私の拒絶をあっさり飲み込む筈はないだろう。
(それに、この異能を持つ私に対してたった三人でやって来たことも考えれば、何かしらの切り札があるかもしれない。未だ、周囲を囲まれたりはしていないみたいだけど)
一応、何があっても対応出来るようにそっと身構える中、広津さんはやがて深い溜息を吐いた。
「……この手はあまり使いたくなかったのだがね」
小さく呟き、彼は静かに目を開けた。
「A君。太宰君は大事かね?」
「……?」
突然の話の切り替わりに直ぐに頭がついていかず、少し私は面食らった。だが言葉を理解をしても何故ここで太宰さんの名が出るのかが判らず、眉を顰める。
「それは、確認する必要のあることですか」
「……そう。必要はない。答えなど判り切っている」
彼はそう云って意味深に目を細める。ますます意味が判らなかったが、続けられた言葉に、私は
「A君。マフィアに戻らない選択と、太宰君の命、どちらが大事かね?」
「――!」
心臓を、大きな氷の手で鷲掴みにされたようだった。嫌に鼓動が大きくなり、ざぁぁと血の気が引く潮騒に似た音が、耳元で聞こえた気がした。
「真逆……太宰さんは……」
広津さんは答えない。立原さんも、銀さんも、ただ黙って私をじっと見ている。
そんな彼らを前に、私はぐっと唇を引き結んで俯いた。
(道理で、たった三人で私を連れ戻しに来る訳だ。こんな強力な切り札があって、負ける訳がない)
黙り込む私から答えを汲んだのだろう。銀さんと立原さんが近づいてきて私を挟み、広津さんはくるりと背を向けた。
「では行こうか。処刑人殿」
――抵抗、出来る筈がなかった。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時