6.事件という名の…… ページ27
そのまま知らぬ存ぜぬでいられる訳もなく、取り敢えず太宰さん達を追いかけた私と敦さんは、数分後、赤レンガ造りのビルの前に辿り着いた。
どうやら此処の四階に探偵社はあるらしいのだが、事件が起きているにも拘わらず何故か周囲に軍警の姿はない上、普通にビル前を一般人が歩いている。それが少し奇妙に思えて、私は国木田さんを振り仰ぎ尋ねてみた。
「あの、何故軍警に通報していないんですか？せめて交通規制くらいかけないと、一般人が危険なのでは」
「犯人が軍警を呼んだら爆弾を起爆させると云っている。人質がいる以上、下手な真似は出来ん。取り残された社員もいるからな」
「でも、今なら連絡出来るのでは？事情を説明して秘密裏に動いてもらうなり、
更に疑問を重ねると、何故か国木田さんは苦虫を噛み潰したような顔でぐっと黙り込んでしまう。一体どうしたのかと疑問が浮かびかけたが、それが形を取る前に太宰さんが代わりに口を開いた。
「それが来るまで待つよりも、私達で解決した方が早いよ。いつ犯人が爆弾を起爆させるとも限らないからね」
「……なるほど」
少し腑に落ちないが確かにその通りではあるので、私は敦さんと共にそのまま先へ進み出した太宰さん達の背を追う。そして実に呆気なく、犯人に気付かれずに探偵社の中へと侵入を果たした。
植え込みの後ろに隠れた私達はそっと様子を窺い、薄暗い部屋の中央奥にある机の上に座る犯人らしき少年と、その足下に座り込む
「嫌だァ……もう嫌だ……」
何故かガタガタ震えながら不明瞭な独り言を呟く犯人は、軽く正気を失っているようだった。否、こんな行動に出る時点で正気の沙汰ではないのだが。しかし追い詰めている立場の筈なのに追い詰められているかのようなその様子は、少しばかり痛ましくも見える。
「全部お前らの所為だ……。『武装探偵社』が悪いンだ！社長は何処だ、早く出せ！でないと――、爆弾で皆吹っ飛んで死ンじゃうよ！」
ガッと女学生を掴み上げながら唐突に喚き散らした犯人に、ビクリと事務員達が肩を振るわせる。いつその左手に握った起爆装置の釦を押してもおかしくない様に、太宰さんは「あちゃー」と緊張感に欠ける声を漏らした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 327人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません！公開しました！そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (
レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です！！続編が、楽しみです！何日くらいに、なるのでしょうか！ (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます！のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね！(*´ω｀*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー！ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霜夜華
| 作成日時：2019年6月10日 15時
