自己中 ページ43
「あさぎりゲンが良かろうが悪かろうが、科学王国の仲間にゲットするしかねえんだよ。
"司、千空はちゃんと死んでた"って偽情報を流させる。俺らの勝利条件はそれしかねえ」
上で悶々と話し続ける部長。声は落ち着いているが、多分焦っている。何としてでもゲンは味方になって貰わねば。
同じく上から、クロムの声が飛ぶ。
「聞いたかよゲン!テメーも見ただろが!」それに、ゲンの脚がぱたりと止まった。どちらかというと、声に驚いた様子だ。
「電気を!あのヤベー科学の灯をよ!勝ち負けとか知ったことか!
司VS千空、どっちが有利とかクッソくらえだ!
面白えんだよ!断然科学王国はよ!」
クロムの言葉虚しく、ゲンがにっこり笑った。
「いや〜熱いね〜青年の主張。でも残念。俺はそういうのないのよクロムちゃん」ゲンは続ける。
「世界一ペラッペラな男でね。自分の損得しか見てないの」
「……本当に帰るの?」
私は梯子のサイドに立つ。そのまますとんと腰をおろして、あぐらになる。
「困るんだよね、告げ口は。私が殺されちゃう」
「なんだよゲンの野郎はよ!」と、頭上から小さく声が聞こえる。私はゲンの目を見た。
まだ死にたくはないと、必死に伝えたつもりだが……少し舌足らずだったかもしれない。
「うーん……Aちゃん?
Aちゃんも割と自分のことしか考えてないタイプ?」とゲン。
「そう思う?」と私。
「"私が"って言ったところ、自己中だな〜って感じがしたのよ」
私は下を向いて笑った。
このメンタリストとか言う奴は、よく分かっている。
あの時、私が司の前でいい子のバカだって猿芝居をしたのは、自分が助かりたかったからだ。
この後司が何かよくないことを起こすと分かっていながら、自分だけを救おうとした。
だから部長が司にやられて死んだときは、自分のしたことを悔やんだ。他にやれることはなかったのか?と。
部長は、自分だけ助かる道を探すなどという事はしない。
でも、私はする。
「…………まあ、そうかもね」
私はずるい人間だな。
近くでそよいでいる風と、虫の音に耳をすませながら、そう思った。
「でも、ゲンだってほとんど同じようなものでしょ。欲しいものがこっちにあったら、すぐ科学王国に入る気がする」
「どうだかね〜」と、またゲンははぐらかすように微笑む。
「俺が欲しいもの、ね……」
ゲンは発電機の向こう側にまわって、見えなくなった。
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くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん:スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う!声優楽しみ! 神月ティアナさん:分かります!龍水もイケメンですよねぇ!ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します!とてもわかります!絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか?!私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです!!ちなみに私は千空推しです! (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します!最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品!胸をキュンキュンさせながら見させていただいています!素敵な作品ありがとうございます! (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました!皆様ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年10月14日 19時