点灯式 ページ41
「蒸し焼きにした竹の繊維だ」
夜、のっぺりとした月を眺めながらぼうっと"それ"の準備を進めていた私や部長。
倉庫の上になんとか這い上がるが、屋根が急でうっかり滑り落ちてしまいそうだ。
「高い場所が必要なのか?」
コハクが私を見上げ、私がコハクを見下ろす。部長は下から上がりながら言う。
「……関係ねえよ。ただまあ、せっかくだからな」
「さすが部長。そういうのは分かってるね」
「るっさい」
「ええ……」釘を刺された。ええ。
クロムもいそいそと、コードを持って登って来た。コードを私に渡し、私はそのコードを部長へと回す。
「そうかアレ…日本の竹から作ったエジソンの電球だ」
「えじそんのでんきゅう?」
スイカは本当にこの時間に出歩いていいのかとは毎度思うが、ゲン(今のところ敵)と話していて楽しそうだ。
「ていうか、私が来る必要なくない?」
部長が点灯役、クロムはコード引っ張る手伝い役、私はというと、特に何もしていない。
「じゃあ点けるか、これ」部長は ほれ、とコードを渡してくる。
「いや……そんな大役できないよ」
「じゃあ、一緒に点けるか」
「え?いやだから二人でやったところで」
「いいから持て」
がしっと腕を掴まれ、その手にコードの片方を持たせられる。
「…………!」
なんというか、部長の手が想像よりも大きくて、暖かくて、びっくりした。
なんか、変な感じだ。
「…………………」私は部長を睨んだが、部長の真っ直ぐな目を見たら、嫌だと言おうとは思えなくなった。
「…………………。はいはい」
「あ゛ー、それでいい」
前言撤回だ。なんだか腹立つ。同時に、ぱっと部長の手が離れて、少し寒く感じる。
私と部長が竹の繊維に銅線部分を付けると、心なしか、少しずつ明るくなっている気がする。
「………クロム、夜は怖ぇか」
私と部長のやり取りを見て、なぜかニコニコしていたクロムは、部長の問いに顔を深くする。
「おう……そりゃまあまっ暗だかんな。なんだよ急に」
「俺らの時代に、暗闇はねえ」と、部長は言う。
今だって、下に焚き火がなかったら外を出歩くことさえ怖いだろうな。部長は続ける。
「エジソンのおっさんが白熱電球で、世界から夜を消し、24時間をねじ伏せた。
人類は科学で、夜に勝ったんだよ」
繊維はいつの間にか、目に分かるくらい白く光を出していた。
「これは夜の闇を…3700年ぶりに照らす、科学の灯だ」
122人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん:スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う!声優楽しみ! 神月ティアナさん:分かります!龍水もイケメンですよねぇ!ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します!とてもわかります!絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか?!私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです!!ちなみに私は千空推しです! (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します!最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品!胸をキュンキュンさせながら見させていただいています!素敵な作品ありがとうございます! (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました!皆様ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長庚 | 作成日時:2023年10月14日 19時