先は長い ページ36
「……A、……A!」
「…………はっ」
そこで、気がついた。
「大丈夫か?A。さっきからずっとぼーっとしているが」
コハクが、私の顔を覗きこんだ。
やけに明るさを感じて、上を見ると、空はくっきり晴れてしまっていた。
流石積乱雲、台風一過並みの天気の好転だ。
「磁石は……」
発電所のもとである磁石をつくるために何かをした、というのは覚えているが、 無心でやり過ぎた。それ以外の記憶なしだ。
「磁石ならここにあるぞ」
ほい、とコハクが手に持った二つの磁石の棒を交互に見る。いつの間に二つあったんだ。
「磁石とは不思議だな。くっついてしまうと離すのがなかなか難しい」
そう言いながらがしゃんがしゃんと磁石をつけて離してを繰り返していたコハク。それ雷で作った超強力な磁石なはずなんだけどなぁ。
ここはどこだ、と辺りに目をやると、端に二つの影。
「ん?金狼に銀狼だ。なぜここに?」
銀狼がなんというか、気まずそうな顔をしていた。金狼は妙にむすっとして言う。
「貴様らの監視だ」
「へぇ。それはご苦労様」
「A、A先生。今金狼はな、金の槍を破壊されて悲しみに暮れているのだ」
「貴様が壊した」
「分かった悪かった」
「なになに?何が起きた?」
コハクが、今までの事をざっと説明してくれた。
まず発電所には磁石がいること。
磁石をつくるために、雷を鉄にヒットさせなければならなかったこと。
いろいろやって、はげ山に行って金の槍を避雷針代わりにして、雷を落として磁石をつくったこと。
「というかA……。よくそれで一緒に作業したな」
「うーん。私もそう思う」
本当に雷はしょうがない。ほっといてくれ。
「とりあえずよ!これで作れんだな!そのヤベー電気っつう奴をよ!」
「そうそう作れんの!電気ー!!」
クロムの電気という言葉だけで妙に気合いが入ってしまった。お恥ずかしい。
ふいに近くで見ていた部長が、私の勢いにはっと笑った。
「電気だけではしゃぐなよ」
「………!」
今までの悪い顔の笑いではなく、どこにでもいる少年の笑顔だ。
それを見て、なんだか不思議な気持ちになった。
部長……そんな顔もできるんだ。
一瞬落ち着くが、気づいた。
「人の顔見て笑ったってことでいい?部長」
「あー、どうとでも捉えろ」部長は結局素っ気なかった。
「ええ〜」
言いながら、私は微笑んだ。
磁石が完成した。
先は果てしなく長い。
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くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん:スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う!声優楽しみ! 神月ティアナさん:分かります!龍水もイケメンですよねぇ!ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します!とてもわかります!絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか?!私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです!!ちなみに私は千空推しです! (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します!最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品!胸をキュンキュンさせながら見させていただいています!素敵な作品ありがとうございます! (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました!皆様ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年10月14日 19時