入部の出会い(過去編だよ) ページ35
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「失礼します。科学部に入部したく来ました」
「ああ?」
荒げられた声が、私の耳を通過した。
多分、ここであってるはずだ。
広末高校に入学したら、科学部に入部する、というのが、私にとってのミッションだった。
目なんて見えなくても、何か役に立てることがあるかもしれないと思ったし、他にできそうな部活もなかった。
このだだっ広い学校で、人の声がしたら闇雲に理科室の方向を訊いて、なんとかここまで辿り着いた。
それだというのに、科学部の人、とは思えないくらい威勢のいい、太く野蛮そうな声に少し驚いた。たじろぎかける。
……いや、それでも私は、この部活に入るんだ。
私は強く決心をして、男に訊く。
「ここであっていますか?」
「お前、新入生か。それに……」
男は間をおいてから言った。
「はっ!白杖持ち、盲目か!!」
「え…?」
笑っている。男は今、楽しそうに笑い声を上げている。
「障害者が、なんでここ入学してんだよ!」さらに男は言った。さもおかしそうに、笑いながら。
「なになに?どうしたの?」
奥から他の声が伸びてきた。それなのに、私の耳から、遠ざかっていく。
「障害者様が入部のご希望だ」
「ええ〜ひどいよ、なんてこと言うの?障・害・者だなんて!」
言いながらもあははっと笑う女。
「………………」
……なんだよ、これ。
くだらない。最低だ。
やっぱり人間は、身体の特徴が違う奴を貶めるのが好きなのか。
頭が悪いから、そんな発言をするのか。
……それとも、本当にそう思っているのか。
━━━目が見えない今のあんたは、ただの役立たずで、弊害なの。わかる?
走馬灯のように巡る、誰かの声。
急に、身体が震えた。反射的に目をあける。
いつからだろう。気分が悪くなると、自然と目が開くようになったのは。
目をあければ、光が差す。明るさを感じる。これが普通の人。
そうするのは、普通の人は、闇を恐れるからだ。当たり前だ。
暗いよりは明るい方がいいに決まってる。皆が光を求める。
でも私はもう、光を求めることはできない。何も見えやしない。今の状況のように、求められない者は希望なんてない。
……やっぱり…
………駄目、か……。
「失礼しました」と、そう言って、帰るつもりだった。
「おい」
突然背後から声を掛けられた。その男の鋭い声が言う。
「テメーももしかして、科学部に入りてぇのか?」
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くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん:スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う!声優楽しみ! 神月ティアナさん:分かります!龍水もイケメンですよねぇ!ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します!とてもわかります!絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか?!私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです!!ちなみに私は千空推しです! (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します!最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品!胸をキュンキュンさせながら見させていただいています!素敵な作品ありがとうございます! (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました!皆様ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年10月14日 19時