雷(ﾟ∀ﾟ)ｷﾀｺﾚ ページ34
「あとは…雷さえ来てくれりゃ…」
倉庫内でぼやいていた部長の声を掻き消すように、突如轟音が辺りに鳴り響いた。
「え」
さっきの調子が嘘のように、私の思考は停止した。
雷鳴だ。
ふつりふつりと、冷たい滴が降ってきて、急に寒くなった気がした。
「本当に来ちゃったんだよ……！」
「ハ！たしかに雷の季節だが」
「ラッキーすぎんだろ……！」
皆が口々に騒ぎ、空を見上げる。
……雷。
雷がきた。
「逆だバカ！最悪のパターンだ！まだ1ミリも準備してねえ時によ！」顔をくしゃっとさせて少しキレ気味の部長。
「…………………」
「んー？Aちゃん、どうしたの？固まっちゃって」
ふと、ゲンが私の様子に気づいて、首を傾げた。
「………怖い」
「ん？」
言いたくなかったが、しょうがない。
「雷は……怖いよ」語尾が自然と小さくなった。
雷は正直苦手だ。かなり。
もともと、というよりはトラウマに近い。
あの日。
中学校からの帰り道、耳につんざいた強烈な雷鳴。だというのに隣にいた杠のまったく怖がらない様子。
恐らく1キロ圏内にあったであろう雷雲。風の音。
雨、雨、風、雨。
あの日から、雷鳴を聞いたら聞こえる音という音すべてヘッドフォンやらカーテンやら窓やらでシャットアウトしている。
今も進行形で、倉庫の中に直行してゲンと話している。
「発電所は好きだけど、雷は好きじゃない」
「う、ん……？発電所が好きな子も初めて見たけど」
少し疑問形にして、ゲンが返した。私はゲンから目を逸らして、ゆっくり扉を閉める。
「私は外に出られないから、部長達で頑張って磁石を……って、ちょっ!?」
扉ががっと開いて、部長が顔を出した。
「おら出てこいA。仕事だ」
いつも通りの、人使いが荒そうな口調だった。
「嫌だね。断る」
私はきっぱり言った。本当にやめてほしい。雷だけは勘弁だ。
「知るか。人手が足りねえっつってんだろが」
「お願いだから今日だけはやめて？雷に打たれたら死ニマスヨ？」
「安心しやがれ。雷が当たる確率なんざ何万分の一だ。宝くじ一等より当たらねえ」
「いや知らないって」
「いいから行くぞ」
「ええ………」
抵抗の甲斐なくして、私はその後泣く泣く連行された。
「ひいっ！」
「Aビビり過ぎだろ！！大丈夫かよ！」
電光石火作業中、クロムに同じ事を二、三度言われた気がする。
事あるごとに空を気にしてしまい、あんまり作業は捗らなかったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん：スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う！声優楽しみ！ 神月ティアナさん：分かります！龍水もイケメンですよねぇ！ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (
レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します！とてもわかります！絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか？！私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです！！ちなみに私は千空推しです！ (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します！最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品！胸をキュンキュンさせながら見させていただいています！素敵な作品ありがとうございます！ (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました！皆様ありがとうございます！ (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長庚 | 作成日時：2023年10月14日 19時
