アク料理 ページ27
「そこに野鳥の卵をブチ込む」
今の少し友情というか何かが感じられそうだった展開は、部長があっという間に消し去った。流石速攻屋。
「んで灰のアク、炭酸カリウムでモチモチにする」
アクを投入しながら部長が言う。クロムは部長の言葉に首を傾げた。「アク?」
原始村の人はアクとか取らなそうだ。私は小声で教える。
「植物とかを水に入れて、加熱したときに出てくる上澄みのことだよ」
「それって旨いのか?」
「一概には言えないけど、大体は美味しくはないかな」
アクも一応、栄養はあるものはあるが、灰のアクはちょっと分からなかった。
「モチモチにするためだけに不味いモン入れんのか」
クロムが眉間にシワを刻んだ。
「味が変わる量入れてねえよ」
「流石にね」
そんなにモチモチにされちゃ困る。部長は続けた。
「これはな、4世紀ごろに名も無きモンゴル人が偶然みつけた、科学の飯だ」
━━科学の飯。最後のフレーズだけ、なんだか妙に響いた。科学の飯って、あんまり美味しそうなイメージが湧かないのは気のせいだろうか。
「クロム、テメーみてえな何でも試すヤベーバカがいたんだろうなァ」
4世紀のモンゴルにもよ、と部長は付け足す。
「っていうか、もうほとんど麺も出来てるね」
部長の前にある鍋のようなものを覗き込む。恐ろしいくらいに緑色なのは変わらず、卵や炭酸カリが混ざったので、表面がてかりを出していた。
やはり、流石速攻屋。
「…ここまで来りゃ、あとは
そこから先は速い。
「好きな物、全部詰め込め!」だ。
「…A、テメーは何味が好きなんだ……?」
「そういうのはあんまりないけど……強いて言うならしょうゆ?」
「いや、ねえよしょうゆなんて」
「じゃあとんこつ」
「豚もいねえからな…。テキトーな動物の骨付き肉でも入れっか」
「いやもう何でもいいよ。あとはメンマに、ネギも欲しいね」
ぐつぐつと煮えたる鍋の中に、次々と具を放り込んでいく。しばらくすると、なんとも言えない香りが、風にのって運ばれてきた。
「こっ、この香りは…!」
さっきトントンした麺を、部長が手作り箸でよそいだ。
「俺らはな!3700年前、このクッソ旨い科学の飯を」
てらりと脂身が乗ったチャーシュー(焼いた肉)に、揺れるたびに太陽の光にちらつく
これはまさしく。
「━━拉麺。そう呼んでた」
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くりぼつち長庚(プロフ) - Kさん:スタンリーはいいですよ〜はやくアニメ化することを願う!声優楽しみ! 神月ティアナさん:分かります!龍水もイケメンですよねぇ!ホワイマンの絡み、って、中々面白いの選びますね笑 (12月23日 20時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
神月ティアナ(プロフ) - 初コメ失礼します!とてもわかります!絡みが気になるキャラだと毎回上位にいるのが龍水、フランソワ、宝島組、アメリカ組、SAI、ホワイマンなんですよね (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 7ac5013380 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - マジですか?!私はアニメででしか知らないので....スタンリーやゼノをGoogleで知ってる程度で....彼らの良さを早く知りたいです!!ちなみに私は千空推しです! (12月23日 15時) (レス) @page50 id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - 初コメント失礼します!最近読み始めたのですが素敵ですねこの作品!胸をキュンキュンさせながら見させていただいています!素敵な作品ありがとうございます! (12月23日 11時) (レス) id: 3281584211 (このIDを非表示/違反報告)
長庚(プロフ) - お気に入り100人いきました!皆様ありがとうございます! (11月22日 22時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年10月14日 19時