万里の時を駆ける3[Dr.STONE]

コハクの視力 ページ3

「クロムの倉庫を借りて、部長と寝たけど…」

「…それだけか？」ずいと迫られる。何を期待しているんだ。
別に私と部長はそういう関係じゃない。

「それだけだよ。別に部長、そういう事しないし、安心して寝られたよ？」

「……そ……そうか…？」

「うん」

私が断言すると、どこか残念な顔をして「まあいいか」と呟いていた。

「それよりも！もうクロムも私も準備は出来ているぞ！はやくルリ姉の病気を治す方法を教えて欲しい！」

やる気満々のコハクは、私の手を引いて、倉庫の方へと歩いて行った。

歩きながら、母さんの蔦の絡まった石像を見る。母さんがいるなら、この辺のどこかに父もいるんだろう。

しかし探す気はなかった。

私はそんなに優しい人間じゃないんだ。



森を抜けて、倉庫が見える所まで戻っていくと、クロムが部長に構ってもらっていた。
部長も熱はすっかり治っていそうだ。さっきの調子が嘘のように、二人の会話は弾んでいる。

クロムが先に、私達に気づいた。

「おー！Aじゃねえか、どこ行ってたんだ？」

「散歩だよ。ストーンワールドは自然豊かだからね」

自然豊かというか自然しかないのだが、気にしない事にする。

「私もそう思うぞA！私の目も、この大自然によって培われたからな！自然とは素晴らしいな」コハクが肯定する。

「目が？コハクは目がいいの？」

何だか羨ましいなと思いながら尋ねる。コハクは腕を組み、うむと大きく頷いた。

「自信はあるぞ。もっとも、君達の姿を初めて見たときは、私は二つほど山を越えた所にいたからな！」

「二つ!?」

コハクの視力はどうやら、常人より少しいいくらい、のようなものではなさそうだ。

「…後で視力検査してもいい？」

「いいぞ！」

交渉が成立した。後でランドルト環をつくらないとな。

「おい！そんな事より、万能薬の作り方を教えてくれよA！千空もな！」

クロムは待ちきれない、といったふうにそわそわしていた。昨日からのお楽しみだったので、知りたい気持ちも分かる。

「あー、教えてやるよ」今回初登場の部長は、前に出て言った。

「俺ら科学王国が作るのは抗生物質。ヒトにとり憑いた細菌をブッ潰す、科学の万能薬だ」

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