万里の時を駆ける3[Dr.STONE]

悪くない ページ19

「あの！そろそろ帰りません？」

女子会トークにそろそろ痺れをきらした私は、勢いよくお開きを切り出した。

始めの方は私の生い立ちや旧世界の話だったので、受け答えも楽だった。

しかしそれは話の一割程度で、他は"結婚できない"とか"こんな男がタイプ"とか、恋愛の話にシフトされていた。そっちの話の経験が皆無な私には大分難しい。

オレンジ色に染まった空にはぼんやりと月が昇っている。どれだけ話していたのやら。

「そうね。また明日も来ようかしら」

ガーネットが悪戯っぽく言った。

「ええ……」

流石にこれを明日も続けたら部長に叱られるんだけどと言いたい。話す聞く、というのは結構単純作業より疲れたりする。

「まあ今日は帰ろうよ。ね！またねA！」

「ああ、はい…」

話の分かるルビィは、二人の姉を従えて、私に背を向けていった。そこに取り残された私は、三人の影をぼんやりと眺めていた。



まあ、悪くない時間ではあったかな。





……そして、三人が帰ったということは、この後にやることがあるという事だ。





＊＊＊＊＊＊＊ ＊

「まさか仕事をサボって夕方まで他人と油を売るとかいう行為、慚愧(ざんき)に堪えない限りでございます……」

「テメー絶対なんとも思ってねえだろ……」

勘違いしないで頂こう。明日も女子会続けたら部長に叱られるとは言ったが、だからって今日叱られないという訳ではない。

もはや部長のお説教は日常茶飯事だ。むろん、私が悪いのだけれど。

「確かに何かを思ってはいませんね。叱られる相手が部長なもので」

言うと部長はやれやれ、といった表情をした。

「…今日だけだぞ？」

「あはは、ありがとう部長」

私が笑うと、部長はすぐに顔を背けてしまった。最近やっぱりこういうことが多い。なぜに？

「みんなー！お待たせしてごめんなんだよー！」

「スイカ！」

スイカが村から帰って来た。潜入捜査は成功らしい。私はスイカのもとへ寄る。

「全然待ってないよ。コハクもまだいないしね」

「Aも仕事は終わったんだよ？」

「へっ？ええーとですね……」

まさか仕事をサボっていましたとスイカに言うのは自分が惨めになりそうだから言いたくない。が、仕事をしたと嘘をつくのは罪悪感があるし……。



「………ま、まあまあ？うん。まあ、はい」




私は見事どっちとも取れる超曖昧な答え方でなんとか乗り切ったのだった。

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