万里の時を駆ける3[Dr.STONE]

肉体労働 ページ14

「………で、どうやって炉の温度を上げましょうか？」

「………炉に酸素を送りまくる。んで炎の温度を1500度までバイキルトさせんだよ」

私が尋ねると、部長はちゃちなふいごを私達に寄越した。それを上手にキャッチしてみせる。

バイキルトって、ドラクエの技名だっけ。と私は空を仰いだ。
私もドラクエくらいは分かる。
部長も、そこらのゲームをたしなむ、いやたしなんでいたんだなぁと、何かの知識が増えた。

というか、いつの間にこんなグッズを作ったんだ。

「ほお、こんな便利な物があれば私一人でもいけそうだ！」

コハクはふいごを太陽にかざしながら声を弾ませる。
うーむ……。一人で炎を800度上げるのはコハクでも無理じゃないかなぁ……。

「寝言はやってから言え。人手がいくらあっても足んねえよ」

＊＊＊＊＊＊＊ ＊

「クッソ！もう腕がパンパンになってきたぜ！」クロムが悲鳴を上げた。汗をだらだらと流している。炉の上からは、煙がごうごうと昇っている。

製鉄はかなりの難航を極めた。

さっきから五人で炉を囲んで空気を送っているが………。

「そうだね腕は全体的に痛みが広がってるから耐えられるけれど耐えながら空気を送るというのはなかなか辛い至難の業だねはいはいはいはい」

「A!?さっきからめっぽう饒舌になっているぞ!!大丈夫か！」

……腕がはち切れそうです。製鉄。とてつもない肉体労働だった。

「もちろん大丈夫だよ元気100億倍!!」

「アンパンマンだろうがそれ!!一緒にすんな俺のと!!」

声を荒げながら叫ぶ部長。元気そうで。

「って！すごい元気じゃないの部長！何でさっきあんなにだるそうだったのー!?」

「うるせぇ!!その話すんじゃねえ！こっちが恥ずかしくなるだろうが！」

はあ？何言ってるのこの人？訊き返したいところだったが、腕がそろそろ本格的に限界を迎えてきた。

「あとさ部長！思ったんだけどこれ時間かなり掛かりません??部長??」

「あと何分続けるんだこれを!?」

「ああ？ざっくり……数十時間！」

「製鉄ヤベー!!」

はやく終わらせようと奮闘するものの、一秒がとても長く感じられる。

ていうか、数十時間？クレイジー過ぎる……。

「あっ、ス、スイカ！」

顔だけ向きを変えて見ると、小さなスイカはばったり後ろに倒れ込んでしまっていた。

「無理するなスイカ！休んでおけ！」

コハクもそう言いながらふいごを動かす手を止めない。

脚が痺れて力が出ない…→←体調不良？(コハクside)

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