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懐に入られた私は、それに気づかず彼を自分のテリトリーにいつのまにか入れていた。それも全く不快に思わなかった。
時間を共にする。彼との思い出で溢れているのは、よく一緒にいたから。一緒にいてお互いの価値観を知り、距離をとり、詰め、また少し引く。そして度々天邪鬼な私を諭すよう、季節をなぞって彼は見える視界を共有した。それを私は思い出として大切にさせられていた。
振り返れば本当に、彼の思う壺だったのだ。
ただそれらは、間違いなく優しさだった。たとえ彼がそう思っていなかったとしても、今の私からは優しさの他なかった。
その彼の優しさに甘えて、彼も私を甘やかして、そうしていつの間にか一年。
「拓也くんは策謀家だね。それも超絶変人の」
「んぁ？」
「でもそうだもんね。昔から偉人は大体変人だったって伝えられてるしね。ほんと馬鹿」
「バカは悪口じゃん」
「馬鹿と天才は紙一重だもんね」
虫の音がうるさいほどに響く夜道を二人で歩いた。
私は小っ恥ずかしくて目も合わせられないまま、ぶっきらぼうに呟く。隣でサンダルをペタペタと鳴らしながらのんびり歩いている大男の少し前を進む私の手は、変わらず彼の手とつながったまま。
彼は私を気遣ってか、帰り道にからかってくる事はなかった。私と手をきつく結んでいる彼の手を振り払わずに、天邪鬼なことを言い続ける私。それでも時たま振り返ると、彼は本当にとろけた顔で口元を緩めているから、私は何も言えなくなって、またそっぽを向く。それの繰り返し。
のろのろ歩くのがあまりに遅くて、いつのまにか私が手を引く形で家にたどり着く。さっきからドキドキさせられっぱなしの私の心臓はもう壊れそうで、彼の顔なんかみたら本当に爆発してしまいそうで。
靴を脱ぎ捨ててそのまま部屋に入ろうとする私を、拓也くんは後ろから引き留めた。
まるで覆いかぶさっているような抱きしめられ方で、やっぱり彼は大きいなと、少しでも別のことを考えていないと恥ずかしさに悶えてしまうから、何度も心の中で唱えた。
何を言うわけでもなく、きつく抱きしめられていたその時間はひどく長い気がした。もう絶え絶えの私の羞恥は健全で、口をはくはくとたまに動かすことしかできない。
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マニ。(プロフ) - まほろさん» ✉️。続編を見ました！面白いです！これからも頑張ってください、ボードの返事とかもお待ちしています💝 (12月30日 18時) (
レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - ささくさん» 素敵な感想を頂けてとても嬉しいばかりです。ささく様にいつかふと、思い出していただけるような作品になっていればと思います。新作も執筆途中ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました！ (12月28日 18時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - ささくさん» この度はご愛読いただきありがとうございました☺️ ありきたりな設定でありながらも家族をテーマにしたこの作品では、私としても考えさせられることがとても多く、時に皆様をお待たせしてしまうことがありました。無事、完結することができ安堵しております。 (12月28日 18時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
ささく - これからも陰ながら応援しております。新作等の予定がございましたらお知らせ願いたいです。まほろ様の書く小説が大好きな一読者より。 (12月23日 1時) (レス) id: 6670d41b0b (このIDを非表示/違反報告)
ささく - 本当に本当に、言葉にするのが難しいくらいまほろ様の文章に惹かれてしまいました。別作を拝見させていただき、あまりの文章力に魅了されこちらの作品も読ませていただいたのですが、家族の形や愛情の形の本質が詰まっている素敵なお話で胸を打たれました。 (12月23日 1時) (レス) @page41 id: 6670d41b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2022年9月20日 8時
