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重い瞼を開く。何をする訳でもなく、天井をしばらく見つめた後、体を起こした。熱の篭ったような気持ちの悪さに加えて、背中にべったりと張り付いた寝具。先程とは打って変わって落ち着いた体に胸を撫で下ろし、ゆっくりとベットから足を踏み出した。
まだ目の奥がじんわりと熱を持っているような感じがして、心なしか頭も痛い。
壁に体を預けながら、おぼつかない足取りで俯きながらリビングへと向かうと、目の前に影ができて、体がグッと持ち上げられる感覚がした。
「おはよー」
「…………はよ」
私のことを支えるように持ち上げた彼に体を任せながら、ソファーに腰掛けた。
私の部屋に入れる人は一人しかいないし、その声が何よりの証明だった。私のおでこに手を当てた彼は、少し顔をしかめて、体温計を差し出した。
働かない脳みそがやんわりと記憶を引っ張り出してきて、ああそういえば私が最後に縋ったのは拓也くんだっけと彼を眺める。彼は何を言うわけでなく、ただ床にしゃがみ込んで私の頭を撫でていた。
「38.6……結構熱出てるわ」
「……来てくれたの？」
「そりゃね。不在着信一件に返信は全く無し。気になって行ってみたら床に倒れてんだもん。サスペンスだよ」
困り眉で俯く私に、焦ったように、「無事でよかったけどね？！」と彼は言い聞かせる。確かにサスペンスだ。オルガンの音がなるのも秒読みだったろうに。
彼はその場を立ち上がり、キッチンへと姿を消した。その後ろ姿を目で追いながら、つくづく彼に正月の時に鍵を無理やり握らせてよかったなと思った。おかげで倒れた私は、難なく救出してもらえたのだから。
「たまごがゆ、作ってみたんだけど」
「……」
「なんかお腹入れないとだから。少し、少しだけ俺と頑張ろ、ね？」
私は既にひどく掠れた声を出す気にもなれなくて、困ったように尋ねてくる彼に小さく首を振るしか脳がない。目の前のたまごがゆは艶めいていてとても美味しそうだけど、先程の吐き気に襲われるのが怖くて、食べる気にはならなかった。
しばらくの押し問答。私の口は硬く、終いにはスプーンを差し出しながら、「じゃあ三口でいいから、いい子だから」と宥めるように言われる。小さく首を振るも、彼は折れなかった。
こうなった彼は頑固だ。諦めて彼から口に運ばれるスプーンの粥を含んで、嚥下する。痛む喉に顔を歪める私を、彼は「よし。えらい！」と小さな子にするように褒めた。
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マニ。(プロフ) - まほろさん» ✉️。続編を見ました！面白いです！これからも頑張ってください、ボードの返事とかもお待ちしています💝 (12月30日 18時) (
レス) id: 4c65165166 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - ささくさん» 素敵な感想を頂けてとても嬉しいばかりです。ささく様にいつかふと、思い出していただけるような作品になっていればと思います。新作も執筆途中ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました！ (12月28日 18時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - ささくさん» この度はご愛読いただきありがとうございました☺️ ありきたりな設定でありながらも家族をテーマにしたこの作品では、私としても考えさせられることがとても多く、時に皆様をお待たせしてしまうことがありました。無事、完結することができ安堵しております。 (12月28日 18時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
ささく - これからも陰ながら応援しております。新作等の予定がございましたらお知らせ願いたいです。まほろ様の書く小説が大好きな一読者より。 (12月23日 1時) (レス) id: 6670d41b0b (このIDを非表示/違反報告)
ささく - 本当に本当に、言葉にするのが難しいくらいまほろ様の文章に惹かれてしまいました。別作を拝見させていただき、あまりの文章力に魅了されこちらの作品も読ませていただいたのですが、家族の形や愛情の形の本質が詰まっている素敵なお話で胸を打たれました。 (12月23日 1時) (レス) @page41 id: 6670d41b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2022年9月20日 8時
