狐につままれる ページ4
.
「なぁに食べよっかなぁ」
「……」
「ポテトとか半分こします？」
まっすぐ俺を見て尋ねてくる女に首を振ってみせると、奴は「え〜……じゃやめよ」と口を尖らせた。
メニューを広げて一枚めくるごとにうーんといちいち悩む女と、それを尻目に頬杖をつく俺。
女と二人でファミレスなんて高校生ぶりかと思いながら心の中で考える。
こいつ、幾つなんだろうか。流石に成人しているだろうけど。
どうも間延びした稚拙な言葉遣いが目立つ。とか思ってたらたまに見せる丁寧な言葉遣い。
皺が目立たない端正な顔立ちに、ハリツヤのある柔らかそうな茶髪。至って普通の洋服を着たその女を眺める。
「そんなに見られると私穴開いちゃう」
「……すいません」
「名前なんでしたっけ」
「梅原ですけど」
「梅原さん何頼むか決めました？」
「……コーヒーで」
女はガッツリ飯を食べるつもりだったらしい。「え、私だけ食べるの……」ともう一度メニューと顔を突き合わせる。
俺はその間心の中で討論会を開いていた。議題はもちろんこの女について。
至って普通のファミレス。何名様かと聞かれ、二名ですと答えた。そこまで問題なし。
お連れ様は遅れていらっしゃいますかと聞かれて、俺は瞬発的に「え？」と聞き返していた。
なんといっても、お連れ様のこいつは俺の側に普通に立っていたからだ。
あれが見えないなんてことがあるだろうか。後ろとはいえたかだか半歩後ろにいたあいつが。
「変だと思いません？普通、一人見落とすなんてあり得ないですよね、普通なら。それも接客業ですよ」
「……」
心の中で一人討論会。そのはずが、こいつは土足で乱入してくる。
じっとりと嫌な汗が背中を伝った。
「そろそろ信じたらどうですか」
「……」
つまらなそうな顔で俺を見てくるその顔を見つめて、ため息をついた。
長い長い沈黙の後、俺はようやく口を開く。「たとえば、あなたが神だって証明できることはあるんですか」と。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し - 普通の夢小説とは違う何とも言えない夢主の存在がたまらないです。まさかファンタジー（？）系でこんなにハマるとは思ってませんでしたほんとに。めちゃめちゃ面白いのでいつも更新楽しみに待ってます。これからも頑張ってください (4月13日 10時) (
レス) @page6 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 興味本位で見たらどっぷりハマりました。夢主ののらりくらりかわしていく感じがめちゃ好きです。小説の雰囲気も好きです。更新楽しみに待ちます (4月8日 1時) (レス) @page19 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - たれみみさん» とってもとっても嬉しいコメントありがとうございます〜🥲これからも更新続けてまいりますのでぜひご愛読くださいませ(ˊo̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ˋ)ᐢ コメントもお待ちしております！ (2月19日 20時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
たれみみ(プロフ) - まほろさんの新作とっっっっっっても楽しみにしておりました。入りからずっと最高です…ありがとうございます…この作品の更新楽しみにこれから生きていこうと思いました。ありがとうございます。 (2月16日 18時) (レス) @page1 id: 2e7d03848e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まほろ | 作成日時：2024年2月15日 18時
