いつかまた、会えたら

第16話 ページ16

side.REO







「…遅いな、直人さん」







トイレって、大の方かな？


踊りながら、我慢してたのかな？


帰ってきたら弄ってあげようかな
とか思ってたら


救急車のサイレンが
遠くに聞こえた



それはこちらに近付いて来ていて
この事務所の前を



…通り過ぎる事なく
突然鳴り止んだ





そして


不意に、スタジオの外が
騒がしくなった







「…？」







誰か倒れたのかな？


怪我人とか？


なんの気なしに外に出てみると
近くのトイレが騒がしかった





…トイレ？





何となく胸騒ぎがした


まさか、そんな事ある訳ない


…でも、本当だったら





俺の中の勇気を総動員して
トイレを覗き込んで







…絶句した







「…直人、さん…？」







青白い顔で気を失ってる直人さんが
ちょうど担架に乗せられる所で


俺はわけが分からなくて
その場に座り込んだ







『事務所の方ですよね？』







俺の前に立ったのは、忙しなく
動き回る救急隊員とは違う


白衣を来た男性







「…は、い」


『付き添いは私がしますので
社長さんに、伝言をお願いします』







胸ポケットから取り出したメモ用紙に
何かを走り書きし


それを、俺に差し出した







『そこの住所にある病院に搬送します
下の番号は、私の連絡先です』







俺が何かを言う前に、担架を追いかけて
走り去って行った白衣の男性







「…何、え…？
直人さん、何で…？」







頭の混乱は収まらなくて


でも、早くヒロさんに
知らせないといけなくて


震える手で
連絡先を開いた







prrrr.prrrr.pr..







ヒ《もしもし》


「…ヒ、ヒロさん、あの、…」







名乗る事とか礼儀作法とか
全部吹っ飛んで


とにかく報告しようと
ぐっちゃぐちゃの言葉を紡いだ







「い、今…あの、じむっ、事務所で、
ダンス、ダンスを…」


ヒ《落ち着け、玲於か？どうした？》


「事務所の、スタジオで、
おど、踊ってて、」


ヒ《…そういえば、今さっき
救急車が来てたらしいな》







ヒロさんの呟きに、俺はまた
座り込みそうになるのを堪えて


言葉を、絞り出した







「…それっ、直人さん、なんです…！」


ヒ《…え？》


「直人さんがっ、運ばれたんです…！」

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