らくだい魔女と終わりの魔法 (ページ35)

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３５．「そばにいるよ」ページ35

チトセside

夢から引き戻されるような感覚。

オレは、あたたかい体を抱きしめながら、光の源に向かっていく。

なんだ、これは？

命が、戻ってきているみたいに。

どうして…まさか！

「フウカ……！？」

オレがハッと目が覚めると、目の前にはひび割れた石盤。

終わりの魔法の石盤だった。

「オレ、生きてる……！？」

唖然としていると、

「チトセくんが生き返ったわっ！でも、フウカちゃんがっ…！」

カリンの声が聞こえた。

慌てて体を起こし、駆けつけると。

「フウカ…」

フウカが倒れていた。

「おいっ、フウカ！！！起きろって！らくだい魔女っ、寝坊助っ、ちんちくりん！！」

精一杯の悪口を言っても、フウカは「なんですってーっ」とは言わない。

オレはフウカを抱き上げ、ただただ名前を呼んだ。

「フウカちゃん……」

カリンの震えた声。

すると、フウカはうっすら目を開けた。

「フウカっ！」

「フウカちゃん！」

琥珀色の懐かしい瞳を見せるフウカ。

フウカは、小さく呟いた。

「みんな……風で上手く、悪魔達を追い返したよ…！…疲れちゃったなぁ～……」

「フウカ…」

「もう、カリンは泣かないで？カイってば、こういう時にカリンにアピールしなくちゃでしょ？リリカ、笑わないけどどうしたの？ほら、キース。あたし、頑張ったでしょ？……キースもそんな顔しないでね」

フウカは力無く笑う。

フウカの命が消えていくと共に、オレの命が返されていく。

……こんなの、残酷すぎる。

「チトセ。」

フウカがオレの名前を呼んだ。

「マザコン王子ってば、何泣きそうな顔してんの？」

「…泣いてねーよ」

「あははっ！……そうだね、チトセは泣かなかった」

フウカは、オレの手を握りしめた。

「チトセはいつも、守ってくれたね。凄く勇敢だった。今しか言えないけど、かっこよかったよ？」

「………！」

「チトセともっと、話したかった。チトセだけじゃない。みんなともさ。ゲームもしたかったし、お菓子も食べた～いっ！今更…無理だよね」

別れが近づいている。

フウカの体が、薄くなっていく。

「みんなのこと、凄く大好きだよ！」

ニカッと笑うフウカ。

「待って……いなくなるなよっフウカ！」

オレは叫ぶ。

フウカの足が、光の粒になった。

「いなくなるわけない。……あたしはみんなのそばにいるよ」

フウカは、そう言い残して……光の粒となり、消えた。