らくだい魔女と終わりの魔法 (ページ26)

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２６．いない神様ページ26

キースside

「そんなの……許されないわ！」

ボクの部屋に、リリカのヒステリックな声が響く。

ここは、黒の城。

ボクは、例の魔法を使うべく、赤の国に向かう準備をしていた。

例の魔法は、カンドラ王国の魔法とも言われていたから。

「でも、ボクは……行かなくてはならない。…ごめん」

リリカは、ポロポロと涙を零す。

「あの子はね、そんなの望んでないのよっ！！」

「分かってる。……でも、ボクに生きる価値はないんだ」

「そんなことないわ！」

リリカは、キッとボクを睨んだ。

「リリカが必要としてるじゃない！それなのに…」

「フウカしかいないんだっ！」

ボクは、声を大きくした。

リリカは目を見開いた。

それもそうだろう、ボクが怒りに身を任せることなんてめったにないのだから。

フウカしかいないんだ。

この世界にフウカがいないなんて、有り得ない。

世界を光に導くのは……フウカだけなんだ。

ボクは、立ち去ろうとした。

すると、リリカがギュッと袖を掴んできた。

「待って……行かないで…リリカも行くからっ！」

「……！？」

「お兄様を……死なせたくないわ！」

リリカ……。

ボクは、黙って歩く。

リリカは、後ろをついてくる。

「来てもいいけどさ。

絶望を目の当たりにするよ。

それなのにいいの？」

来ないで欲しい。

来ないで、来ないで、来ないで。

強く願った。

……けど。

「リリカは……お兄様のそばにいるから」

リリカは、一度決めたことはやり遂げる少女だ。

嗚呼、神様は……なんて残酷なのだろうか。

いや、……そもそも神様なんていないのだが……ね。