らくだい魔女と終わりの魔法 (ページ2)

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２．彼女がいない朝ページ2

チトセside

誰にも取られていない奇跡的な朝食を取り、オレは城を出る。

「…ホウキ」

そう一言言うと、ホウキが現れる。

パシッとホウキを手際よく掴み、オレは乗った。

…ホウキなんか嫌いだ。

アイツを、思い出してしまうから。

『あたし、ホウキって大好き！気持ちいーじゃんっ』

そう言う彼女の声が、今でも思い出せる。

だいぶ昔に聞いた言葉なのに、はっきり思い出せるのだ。

でも、オレは、ホウキが嫌いだ。

忘れようとしたのに、ホウキに乗ると思い出す。

いや、ホウキだけじゃない。

周りの物、すべてが、アイツを思い出させる。

すべてが…。

キラキラと輝くはずの銀の城は、どんよりと曇っているように見える。

『ギャッ、また怒られちゃうよ！』

アイツがよく眺めていた花壇も、力ない。

『綺麗だよね～、良いなぁ、なんか憧れちゃう』

アイツとよくぶつかった、廊下の曲がり角も、何か物足りない。

『イダッ！もー！チトセ、ちゃんと前見て歩いてよ！』

アイツが、よくホウキを折る所も、空から木の枝が落ちてくることはない。

『あー！また折れた～～っ！』

すべてに、アイツとの思い出が…

刻まれている。

「おはよぉ」

「＿！」

突然、声をかけられ、オレは肩を震わせた。

そうだ、今は教室にいるんだっけ。

オレに声をかけてきたのは、アイツの親友のカリンだった。

「あ、あぁ。おはよう」

ぎこちなく挨拶を返すが、カリンにはバレたみたいだ。

アイツのことを、思い出していたと。

「今日でもう、一年は経ったわねぇ…、あの日から」

「…そうだな」

もう、一年も経ったのか。

長いような、あっと言う間なような、不思議な感じである。

(普通だったら、アイツも今、中等部にいるはずなんだよな)

オレは、そう思いため息をつく。

オレたちは、初等部から中等部に移り変わった。

でも、アイツがいない学校なんか、面白くない。

…なあ。

本当は、まだいるんじゃないのか？

また、変なことして、怒られてるんじゃないのか？

お願いだから、答えてくれ。

…フウカ。