神のいない世界で (ページ9)

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なのに目の前で情けなく涙を流しだすフランシスを見ると、本当に割り切ることが出来なかったのは彼なんじゃないかとアーサーには思えてきていた。ずっと心の中で押さえつけてきたものがあふれてしまうのだ。アーサーだって誰も死なない世界は生きづらそうに感じる。ハワードをはじめ、ずっと一緒に居たかった存在はたくさんいるのだから。

「泣くなよ……お前が泣いて、どうすんだよ……」

ティーカップをソーサーの上に置くと、目頭が熱くなっていくのを感じる。

「くそ……なんでこんな世界にしやがったんだよ。今更こんなことされても、何も嬉しくねえよ」

アーサーも涙をこぼす。乾いた木のテーブルに、どんどんと水滴が垂れていく。

「……相変わらず泣き虫だな、お前」

フランシスは涙を拭いながら、アーサーにそう言ってやる。

「は？お前だって泣いてるくせに」

そう言い返すアーサーも、涙をこぼしている。しかし、それと同時に笑っていた。

その後、二人は今まで手から零れ落ちたものを追悼するかのように泣き続けた。叶うことなら同じ時間を過ごしてみたかった、もっといろんな経験をしてほしかった。様々な思いに決別をつけるため、涙に変えて捨てていった。