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そしてついにその約束の日。一段と気合が入っていた。
仕事を定時に切り上げ爆速で帰宅。
仕事着は脱いで、洒落すぎないゆるいワンピースに軽く化粧をする。
腕時計が19:30を刺した時、軽く深呼吸をして私は隣の部屋のチャイムを鳴らした。
ガチャ
ドアの開く音と共に出てきたのはいつも通りのオスマンさん。
しかし、私はいつも惹かれるその綺麗な顔立ちでなく、別の部分に目が釘付けになってしまった。
二の腕と腹部のあたり。
真っ白なワイシャツには全くと言っていいほど非釣り合いな、赤黒い何かが滲んでいるのだ。
「へ……」
思考が停止する。頭が空になる。
それが何かなんて考えたくもないのに、そんな思いとは裏腹に頭は目の前の光景を着実に整理していく。
数秒間の沈黙を経てやっと状況を理解した。いや、理解はしていない。
「あ、お、オスマンさん？！その怪我……あ、え、あ、どうしよう、早くどうにか、えっと、」
応急処置？どうやって？絆創膏？包帯？
目に見えて慌てる私に対して重傷を負っているはずの彼が一番落ち着いてる。あべこべというのが正解か。なんて奇妙な光景なんだ。
「ご飯、できてますよ」
彼の何気ない言葉が鶴の一声となり、停滞していた時間は進み始めた。
とはいったもののそんな大怪我を負われた状態で一緒に食事なんかできるか。どうにか手当をしてもらわなければ、と必死に声を掛けてもなかなか頷いてもらえない。しかし手先がそこまで器用ではない私は、ここまでの大怪我の応急処置をすることもできず、混沌とした事態に頭も働かず、結局オスマンさんに言われるがまま痛々しい怪我を放置して食卓につくことになってしまった。
どうしてこうなったんだろう。
出された料理はハンバーグだった。ファミレスで見るものとは違い小ぶりで、庶民の私にはテレビの中でしか見た事のないものだ。ニンニクが入ったデミグラスソースがたっぷりかかっており、お皿の端には洒落た葉っぱと輪切りのにんじん、小鉢にはバジルがまぶされたマッシュポテト。
恐る恐る正面に座るオスマンさんを見るとパチリと目が合った。何を勘違いしたのか彼は笑顔で料理の説明を始める。
今日のメニューはデミグラスソースのハンバーグ。副菜に生のクレソン、にんじんのグラッセにマッシュポテト。グラッセとはフランスの料理用語でバターを含んだ煮汁でツヤをつけて煮る、という意味らしい。
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メイナード(プロフ) - 天の河さん» 天の河様、コメント有難うございます。心中をはじめとした愛故の行動というものは、いつだってどう暴走するか予想の出来ないものですが、それが綺麗で、幸福であったならそれに越した事は無いと思います。閲覧有難うございました、どうか良き日をお過ごし下さい。 (2021年8月15日 19時) (
レス) id: f7c0eb2159 (このIDを非表示/違反報告)
天の河(プロフ) - 著名な方しか居ない合作ともあって、全てのお話が綺麗で、読んでいてとても楽しかったです。心中は個人的にとても大好きなので幸せです。grさんのお話と、馬鹿なshaさんのお話が特に好きです。もう大好きです。ありがとうございました。 (2021年8月15日 16時) (レス) id: cb69af0fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：企画参加者（午後） | 作成日時：2021年8月15日 12時
