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こんだけイケメンなら女の扱いなんて慣れっこだろうと勝手に思っていたがそんな思考は振り払うべき偏見だ。
毎日怪我までしてご飯を作って届けに来るなんて。想像以上にわかりやすいアプローチを仕掛けてくるのでもうなんだ、ギャップ萌えってやつか。好感度爆上がりだ。大好きになってしまった。しかも分けてもらうご飯も絶品ときた。世に言う胃袋を掴まれたってやつだ。
受け取った鍋の蓋を開けると、熱気と共にほんのり甘い出汁の香りが鼻先から体内に舞い込んでくる。
中を覗き込むと、大きめに切られた歯応えの良さそうなじゃがいもとにんじん、熱によって背を丸めた豚肉。すっかり飴色に変わった玉ねぎからはその見た目のせいか、まだ食べてもいないのに甘みが感じられる。全体が暖色で纏まった『肉じゃが』はその辺の料理番組で見るものよりも遥かに美味しそうで、自然と頬が緩んだ。
「いつもすみません、ありがとうございます」
「いえ、こちらが勝手に持ってきているだけなので」
そう言って綺麗に微笑み、去っていく後ろ姿を見送り私も部屋へ戻る。
そして机に置いた鍋からまだ新品同然のお皿に今晩のおかずを盛り付けていく。しかし慣れていないからかなかなかうまく行かない。現に一番上に盛り付けたじゃがいもはバランスを崩して皿の淵に落下してしまった。
続いてインスタントの白米をレンジで温めていると、なんとなく炊いた米が食べたくなってくる。引っ越し前に母から貰った一度も使っていない炊飯器、使ってみようか。
そうして出来上がった今日の晩御飯。
一口、口に含むと少し歯を立てただけでじゃがいもがほろほろと崩れた。醤油とみりんの風味が口内を満たして思わず頬に手を当ててしまう。
毎日こんな美味しいご飯をご馳走してもらっていて本当に大丈夫なのだろうか。貰えるものは貰っておけ精神で甘えていたが、こう数日にも渡るとこちらからも何かお返しをするべきだな。
明日の仕事帰りに何か美味しいスイーツでも買って行こうか、とも考えたがまず甘いもの好きなのか？思い返してみると作り過ぎたご飯を届けにくる以外の彼の姿は見たことがない。もちろん職業も知らないし、なんなら年齢も定かではない。
完食までお礼の品について考えていたが、何か思いつくよりも前に私が彼のことを何一つ知らないという事実に直面してしまい泣く泣く諦めることとなった。
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メイナード(プロフ) - 天の河さん» 天の河様、コメント有難うございます。心中をはじめとした愛故の行動というものは、いつだってどう暴走するか予想の出来ないものですが、それが綺麗で、幸福であったならそれに越した事は無いと思います。閲覧有難うございました、どうか良き日をお過ごし下さい。 (2021年8月15日 19時) (
レス) id: f7c0eb2159 (このIDを非表示/違反報告)
天の河(プロフ) - 著名な方しか居ない合作ともあって、全てのお話が綺麗で、読んでいてとても楽しかったです。心中は個人的にとても大好きなので幸せです。grさんのお話と、馬鹿なshaさんのお話が特に好きです。もう大好きです。ありがとうございました。 (2021年8月15日 16時) (レス) id: cb69af0fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：企画参加者（午後） | 作成日時：2021年8月15日 12時
