29-2: ページ42
二人の会話を聞き飽きたアズールが、いまだに夢の中のシルバーを起こす。
アズ「シルバーさん、もうすぐお昼が終わりますよ」
心なしか強い揺さぶりに、寝ていたとは思えない鋭い瞳が開かれる。
シルバ「……ん。………ああ……すまない」
眠い目を擦りながらAに預けていた体重を起こす。
シルバ「助かった、A」
『いいよ。起こすためにいたし』
アズ「起こしたの僕でしたが?」
起きたシルバーとアズール、ジェイドの三人と教室まで一緒に移動する。モデルがいなくなったことで中庭は人通りが少なくなっていった。
アズ「それにしても、Aさん。先ほど物憂げな顔をしていましたが、何かお悩みですか?」
お悩みならこの僕が!と胸を張るアズール。だが、流石に好奇心旺盛だと自負しているAでも、こんな危険な人には頼まない。
『ご心配ありがと。でも、ぼーっとしてただけ』
その言葉でアズールらしからぬ間抜けな呆れ顔を披露されたが、Aは菩薩顔で返した。
悩み事はない。でも考えることはある。
それはミステリーショップで鏡を購入した時に聞いたサムの言葉。
サム「この鏡の所有者になった小鬼ちゃんにイイコトを教えてあげる」
『いいこと?』
カウンターに肘をついてニヤリと笑うサムに、顔を近付けて聞き逃すまいと耳を澄ませる。
サム「図書館の司書、シュリー・テラー。勿論、図書館の虜になっている小鬼ちゃんなら、知ってるよね?」
「ええ、まあ」
シュリー・テラー。察しのいい人なら分かるかも知れないが、シュラー様の影響を受けた人物である。
サム「鏡を持って彼に会ってご覧、面白い逸話が聞けるよ?」
『逸話?それってどういう……』
サム「shh…、これ以上は彼に聞くことをオススメするよ」
口元に人差し指を近付けて目を細める。
ここでは話してくれそうにない様子に、その日は諦めて帰路についた。
『……』
隣で教室移動を一緒にする3人の会話を聞きながら、頭の中で図書館へ訪れる予定を立てる。
109人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いす | 作成日時:2022年2月7日 18時