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「こうなったら、力づくで逃げるだけだ!痛い目にあわせてやるぜ!」
ジャミ「そっちこそ覚悟しろ。先輩たちのエスコートに観光案内……こっちは面倒なことをずっとやってきたんだ!スリごときで、これまでの苦労を水の泡にしてたまるものか!!」
ジャミルの悲痛な叫びにユウは泣きそうになる。同じ学生なのに心労は誰よりもあるのだと。
ジャミ「…… A、頼んだ」
『フフ、喜んで』
ジャミ「ダメなら実力行使だからな」
ジャミルの言葉でAは自身のユニーク魔法を発動させた。
『“惑わし隠れる青年の歌、同族に牙を剥けよ”……“
ジャミルの言葉を借りて言えば“心優しき青年”が歌っていた歌によく似た曲調でアレンジを加えた音楽が聴こえる。
「なっ、なんだこれ…?!」
「たっ、助けてくれぇぇ!!」
「ウキッ、キキ!!」
綺麗な壺が踊り出したかと思えば、壺からは壺とよく似た綺麗な蛇。敵意剥き出しの生き物を前に男たちは慄く。
『買えないものしか盗んでない?それでも僕たちのはダメだったね、他を当たってくれる?』
ジャミ「他を当たらせるな」
『いてっ』
ジャミルに軽く小突かれる。自身の頭をさするAの手に被せるように手を置き、話かけてくるマレウス。
マレウ「流石だな、A。罪人にも娯楽を与えてやるとは」
『楽しむって大事なことだよ〜』
Aのショーの様な懲らしめ方に満足したのか楽しそうな笑顔を見せている。
『どう?ユウも楽しめた?』
こちらを振り向いた笑顔のAに流石のユウでも冷や汗を流した。
ユウ「Aさんはどこまでっ……はぁ……俺、疲れちゃいました……」
『フフ。いいね、ユウのその顔。なんか安心する』
ユウ「どういう感覚なんですか……」
マレウ「フフフ。二人は本当に仲良しなのだな」
二人のやり取りに、ツノ太郎は子猫のじゃれあいを見るような顔をして見ていた。
ケイト「いや〜、暴力に持ち込まなくてよかったね」
トレイ「ああ。Aのユニーク魔法は何度みても面白いな」
カリム「A!また宴でそれやってくれよ!なんなら父ちゃんたちにも_」
ジャミ「これは駄目だ、カリム!もっと安全なやつにしておけ!」
泥棒たちを絞めながらこちらに耳を傾けていたジャミルは、カリムの言葉に苦言を呈した。
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作者名:いす | 作成日時:2022年2月7日 18時