25-3：遠い国のスリ ページ27
ユウ「Aさんは買い終わりました？」
『うん、買い終わったよ。満足した』
カリム「満足したか〜！うんうん、よかったぜ！」
満足気なA様の頭を撫でてにこにこ笑顔なカリム先輩。弟とかにでも見えたんだろう。まあ、確かに人間の年齢ではA様が一番年下だろうから合ってる、のか？
トレイ「形として残るものばっかだな。お菓子とかはいいのか？」
『はい。いつ会えるかわからないので、あげる前に賞味期限切れると思って』
Aの頭には十人の同僚。彼らが喜びそうなものいくつか見繕ったものが、喜んでくれるだろうか。
ケイト「にしてはパンがいっぱいだね〜」
『あ、これは寮で食べる用です』
ケイト「パン好きだったんだ？」
『いや、気分です』
熱砂の国のザハブ市場にてお土産を買い、観光を楽しんだ。その後、地元の花火職人とスリに出会った。
ジャミ「危ない、ユウ！」
ユウ「えっ！？」
ジャミル先輩の瞬発力のおかげで危うくスマホがスリに遭いそうなのを免れた。
ジャミ「もう少しでスマホを盗られてしまうところだった」
ユウ「わ、ありがとうございま…、はっ！Aさんは！？無事でした！？」
ジャミル先輩に感謝を伝えようと口を開いたが、すぐに隣にいたAへと気が変わってしまう。
『う〜ん。やられたねぇ』
トレイ「えっ？」
ケイト「な、なにか盗られたの？！」
ケイト先輩の問いかけに、先程購入したパン屋の手提げ袋が無いことを見せる。
ケイト「あ、パンだ！」
トレイ「ぱ、パンを盗んで行ったのか…？」
『いや〜、不思議ですね。ま、例えパンでも僕は許さないけどっ』
予想外なものの窃盗に皆が目を見開くが、被害者であるA様は笑顔を見せている。
マレウ「……」
ユウ「どうしたの、ツノ太郎？」
マレウ「いや。Aは先程の一瞬で盗まれそうになった財布とパンを入れ替えていた。流石だな」
ユウ「わざとパンをスらせた…？」
“パンを盗む”というものに何か心当たりがあったが、それを無視してジャミル先輩考案のスリ捕獲作戦を聞く。
・
・
「な、なぜここがわかった！？」
ジャミルの思惑通り、泥棒はすぐに見つかった。
ジャミ「盗んだ物をすぐに品定めするために、貴様は番人気のない場所を選ぶはずと思ったのさ」
「チッ！捕まってたまるか！」
ジャミ「ふっ、逃げても無駄だ」
作戦通り、皆がジャミルに指定された位置に立ち、泥棒を囲む。
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作者名：いす | 作成日時：2022年2月7日 18時
