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「そんなわけないじゃん。百歩譲ってこのバーに来ることは読めても、私がチェスを選ぶとは限んなくない？」
福良の目線に少し動揺し、掴んだキングを落としかけるも、最後の砦になる場所に置く。
これで、あと何手か逃げられる、はず。
冷静になれ、自分。
「本当だよ。なんならAがチェスを選ぶのも分かってた」
「卒業アルバムに、特技チェスって書いてあったよね。負けず嫌いなAの好みの、定石の展開に持ってきてあげたよ」
福良は対角線上からナイトを差し、またじわりと白の陣地を包囲する。
自分でも忘れていたアルバムのプロフィール欄を指摘され、額に汗がにじんだ。こいつは、なぜそんなことまで知っている？高校の頃、まるで接点はなかっただろう。
「でも、チェス触ったことしかないって、」
「駒に何回かしか触ったことがないのは嘘じゃない。棋譜は何百も読み込んでるけど」
まあ正直何のゲームを選ばれても勝てる自信はあるかな、と言いながら福良は氷の解けたジントニックを飲み干す。
ごくり、と音を立て飲み込んだ喉仏は、まるで捕食者が獲物を丸ごと飲み込んだみたい動く。
「ほら、早くしないと終電の時間になっちゃうよ」
アルコールで怪しく濡れた唇が、優しく急かす。メガネの奥の瞳は、狙いを定めたかのように、細く狭まる。
黒の駒達に睨まれた私の王は、もうここにしか打てない。
私が震える指で駒を進めた動きを見届け、福良が嬉しそうに口元を歪ませながら、黒のナイト取り白の王を転がす。
「チェックメイト。僕のお願い、聞いてくれる？」
呆然とする私の耳元に、濡れた唇を寄せ、小さくささやいた。
机の上のスマートフォンが示す時刻は日付を回っている。福良が利用している駅までの電車は、もうない。
この夜が、すべて彼の計算の上に成り立っていたのに気づいたのは、翌朝のベッドの上であった。
―ーー
The Cardigans "My Favorite Game"
fkr氏は夜がよく似合いますね。
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そのうち(プロフ) - 今回も最高でした…！ぐいぐい押せ押せして相手が断れないような「ご飯これからも行こう」という提案するのも溺愛されてるのも大好きです💕今までのお話もこれからのお話ももう大好きです💕これからも応援してます💕 (2022年3月30日 7時) (
レス) @page18 id: 7f613ac8c4 (このIDを非表示/違反報告)
ぼかみ(プロフ) - ありがとうございます！いつまでもおまちしております:) (2022年2月22日 0時) (レス) id: 66b1b1bb81 (このIDを非表示/違反報告)
アテ(プロフ) - ぼかみさん» >>ぼかみ様、温かいコメント頂きありがとうございます！最近また少し時間が取れそうなので、少しずつ執筆しますね:)気が向いたらまた覗きに来てください！ (2022年2月21日 23時) (レス) id: 01a98e675c (このIDを非表示/違反報告)
ぼかみ(プロフ) - 初コメ失礼します。最高でした...！特に窓の外のkoちゃんのお話が大好きで何度も読み返しています！お体に気をつけて、更新をお待ちしております。 (2022年2月8日 23時) (レス) @page4 id: 66b1b1bb81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みそ | 作成日時：2021年10月24日 0時
