不器用なその手は君を守る為に 2 (ページ24)

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町に降りることは少なかったが、町の人々からは認知されてたらしく、別に変なことでもなかった。
父に一度だけ、自分たちが森で暮らす理由を訊いたことがあったが……父は曖昧に答え、濁してしまっていた。

リル(だから私は、お父さんに内緒で調べた。
私たち家族のことを………)

幼子に出来る、些細なことでしかなかった。
それでも……知ることは出来た。

リル(私たちが『白狼一族』だから、隠れなきゃならなかった…………
私には、その意味も分からなかったけど……今なら理解できる。
見つかっちゃいけなかったんだ、って………)

見つかってしまえば……もうそこからは地獄でしかない。
それを防ぐ為に、身を隠したのだ……と。

リル)…………

それでも、両親は何かを察してたらしい。
幼い自分に、白狼一族としての義務や歴史について話してくれるようになった。
想像を遥かに越えた話だったが……本能的に理解できてしまった。

リル(いつか………あの人にも、話さなきゃならないんだ………)

守ってくれるのならば、事情もすべて話すべきだろう。
だが………それを話すことで、変わってしまわないか不安だ。
一人で、真剣に悩んだ。
悩んでいても、時間は経つ。
考え事をしていると、扉をノックされ、ベポが元気よく扉を開けて入ってきた。

ベポ)リル！！
お昼だよ！
ご飯、食べに行こ！

リル)…………

ベポ)………リル？

リル)………え、あ………

ベポ)……悩み事？

リル)………うん。
少し……考え事、してた。

ベポ)大丈夫？
不安なら、誰かに話すといいよ。
みんな、話聞いてくれるからさ。

リル)うん……ありがとう。

ベポ)あと、お昼だから食べに行こ？

リル)………うん。

こくん、と頷くと、ベポと一緒に食堂へ向かった。
向かう途中も、リルは何かを考えているようで……表情が暗かった。
それは、食堂へ到着しても変わらなかった。
入ってきたベポとリルを見たローが、怪訝な顔をする。

ロー)おい、ベポ。
どうかしたのか？

ベポ)キャプテン………

ロー)……？

しょぼん、とするベポから、リルが何やら悩んでいるようだと聞かされた。

ロー(何を悩んでるかは知らないが……ペンギンが案内してる時は何もなかったようだし、部屋に戻ってから……ってことになる。
部屋には誰も行ってないと思うが……一体何に悩んでるんだか………)

悩むようなことでもあるのだろうか。
考えてみるも、訊かないことには理由も何も分からない。