不器用なその手は君を守る為に 2 (ページ23)

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リル)じゃあ、なんで………？

ペンギン)道具とか揃ってるから……かな？
俺らは見てないけど……リルちゃんの怪我、相当酷かったんでしょ？
それで、急いで手当てする為に手術室使ったのかも。
あそこは何があってもいいように、薬やらの準備が良いから。

リル)…………

と、船内での説明も色々聞いた後、ペンギンから「これから少しずつお手伝いしていこうか」と言われた。
船で生活するにしても……何もしないでいるよりかは、手伝いなどで身体を動かしたりする方がいいから、という理由だ。

ペンギン)リルちゃん、ただでさえ海賊に売られてきたわけだし……何も出来ないのは分かってるからさ。
少しずつでいいから、俺らの手伝いをしながら身体を動かしたり、色々覚えていけばいいかな、って。

リル)………色々、考えてくれてるんだね………
家族以外で、初めてこんな扱いされたから……ちょっと戸惑う。

ペンギン)え、そう？
戸惑っちゃうのか………
でも、俺らはこれが『普通』だし………

リル)…………

ペンギン)あ……リルちゃんが普通じゃない、とか、そういうことじゃないからね！？
ただ……それだけ外の世界から離されてた、ってことだから………
これからは、やりたいこととか見つけたら遠慮なく言っていいからね！
気になることとか、分かんないことでもいいから！！

リル)う、うん………

気にかけてくれたペンギンの圧に負け、頷いて返事をするしかなかった。
案内が終わると、ペンギンに「やりたいことはある？」と訊かれたが……これといって思いつかず。
とりあえず部屋に戻って休むことにした。

ペンギン)俺ら、その辺にいるから……何かあったら声かけてね！

リル)うん………ありがとう。

ペンギン)お礼を言われるようなことはしてないよ。
じゃ！

それだけ話して、去っていった。

リル)…………これが普通、なんだ…………
私、どれだけ普通から離れてたんだろう………

一人になり、ぽつりと呟く。

リル(両親が殺されて、私だけ連れ出されて………生きるだけでも精一杯で。
好きなことも、自由に何かをすることも……出来なかった。)

幼くとも……目の前に広がる現状が、嫌でも分からせてくる。
『お前に自由はない』……と。

リル(私の故郷も……荒れ果てただろうな………
島が襲われた時、森も燃やされちゃってたし………
離れにあった町も、被害を受けてた筈だから………)

リルたち家族は、町ではなく森で暮らしていた。