不器用なその手は君を守る為に 2 (ページ20)

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いつの間にか、怪訝な表情をしていたようだ。
それを察して、リルが小さな声で話してくれた。

リル)えっと………私、部屋の外の音なんかも聴けるから………
それで、周りが何を話してたのか、とか……聞いてた、の…………

ロー)それも、白狼の能力か？

リル)う、うん………
遠すぎると聞こえないけど、私以外の人も、遠くの音は聴くことが出来るの。
会話なんかも聞けるよ。

ロー)なるほど………
それで周りの状況……というよりかは、屋敷での会話を盗み聞いていたのか。
だが、そんなことをしても意味はなかったんだろ？
なんだってそんなことを………

リル)……屋敷から、逃げ出せるチャンスを……探してたの。
人がいるうちに逃げることは、できないから………

つまり……屋敷から逃げ出す為、周りの状況把握をするついでに聞こえていた……ということだ。
不思議に思いつつも話を聞くと、本来白狼一族に備わった能力の一つなので、誰でも使えると話してくれた。
しかし、普通は扉一枚隔てた向こう側や少し離れた場所までしか聴くことができないので、リルのように遠くまで聴ける者は存在しないそうだ。

リル)なんで私だけ、これだけの能力があるのかは分からないけど……少なくとも、それを調べるのが目的であの屋敷に縛られてたのは確かなんだ。

ロー)白狼一族って事実だけでも、特別な存在だってのに……能力が過去の誰にも当てはまらないときたら、調べたくなるのは普通か………
お前は一体、何なんだろうな？

リル)私にだって分かんない。
私が知りたいくらいだもの…………

悲しそうな顔だった。
それもそうだ。
わけも分からず島から連れ出され、買われたと思ったら今度は海軍に酷い目に遭わされたのだ。
本人が一番、自分の持つ能力のことが知りたい筈だ。

ロー(両親も亡くして、天涯孤独の身だからな………
全部が突然で、どうしていいかだって分からなかった筈だ。
少しは、リルの気持ちも分かってやれるかと思ったんだが……失敗したかもな…………)

気を遣ったつもりなのだが……それでも、悲しそうな顔をさせてしまったのは気が引けた。

ロー)…………悪かったな………
お前が少しでも、楽になればと思ったんだが………

リル)………ううん、大丈夫。
いつかは……話さなきゃ、ならないことだもの。
思い出すのは怖いけど……ここの人たちが、悪いことしようとは思ってないのくらい、分かるから。

気遣ってくれてると、気付いていたようだ。