不器用なその手は君を守る為に

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簡単に終わらせてしまっては、傷どころかしつこく追いかけてくる。
彼自身の、研究心を折りたいのだ。

ロー(リルが楽になれるようにする為だ………
多少遊んでても問題にはならねぇ。
それに………)

チラッ、とパディックを確認する。
……まだ奥の方で文句を言い散らしている。

ロー(あの様子からして……自分がこれからどうなるかなんて、考えちゃいねぇな………
まぁ、その方が折り甲斐があるんだが。)

リルを諦めてもらう為に……深い傷痕を、残してやる必要がある。
どうしてやろうかと悩んでいると、海兵の一人が「パディックさん！」と慌てたようにやって来た。
何かを耳打ちすると、パディックは嬉しそうな顔で「そうか！見つけたか！」と言った。

ロー(見つけた………？
まさか………！)

あの顔からして、おそらく見つけたのは…………
ローは慌てて、自分の船の方を向く。
見てみると、甲板にリルが出てきていた。

ロー(あいつら…………！)

何故、リルが外へ………
それよりも、どうして出てきたのか不思議でならなかった。
会話までは聞こえないが、ペンギンやベポが慌ててるところを見るに、リルが勝手に外へ出てきてしまったようだ。
イッカクも、中へ戻るよう言っているようだが……リルは、不安そうな顔で軍艦を見上げるばかりだった。

ペンギン)リルちゃん！
ここに居ちゃ危ないから！！
早く中に戻って！

シャチ)キャプテンの心配してるんなら、大丈夫だから！
キャプテンはそんな簡単に倒されやしないから！

リル)……………

怯えたように、見上げたまま……ただじっと、そこから動かなかった。
少し顔色が悪いところを見るに、パディックとは顔合わせもしたくないのだろう。
だが……ローが自分の為に戦ってくれているのに、隠れてるばかりではダメだと……そう思っているようだ。
不安そうにしつつも、その顔目は軍艦から離さなかった。

シャチ)リルちゃん………？

リル)…………

真剣に見上げるリルに、周りも黙ってしまう。
彼女が、どんな気持ちで見上げているのか……正確には分からない。
だが、彼女も覚悟を決めていることだけは……顔を見て理解できた。

ペンギン)………キャプテンが帰ってくるまで、ここで待ってる？

リル)…………うん。

シャチ)いや、ダメでしょ！？
危ないんだから、中に入って………！

ペンギン)リルちゃんが、覚悟決めてここにいるんだ。
俺たちが無理やりに中へ戻そうとしても……たぶん動かないよ。

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