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カツキさんは話した。森に張った結界によって魔物が外界から入ってこないように、そして竜の棲まう谷へ来ないようにしていたこと。魔物を誘い込み人間界に攻め入るというのは早合点であること。「んで」カツキさんの瞳が、重要な秘密を打ち明けるかのように細まる。
「今回結界を破って侵入した魔物は凶兆だ。あんたもわかってんだろ本当は」
王はカツキさんから視線を逸らさなかった。それは交渉が拮抗したときに使う意図的に作った威圧的な沈黙だった。彼らの間に横たわる無言のやり取りは重く、私はつま先に力が入るのを感じた。先に折れたのは王だった。ショート様の左目と同じ眼を伏せる。「その通りだ」視線を上げ、王の威厳をもって静かに語った。
「かつて大魔法使い、オールマイトが封印した『厄災』が目覚めつつある。混沌とした迷誤の瓦礫の中から、真実の泉を掘り出すのは、悔しいが国王の力では及ばない」
隣でショート様が息を呑んだ気配があった。
「清く、誠実な心と、曇らぬ精神と、囚われぬ目とを持った、類いまれな人物。あるいはその集団でなければ、この国に黎明をもたらすことはできん。俺はその相手が人類との長い隔絶をもつ種族でいいのか考えあぐねているのだ、バクゴーよ」
私はカツキさんの横顔を見上げた。動じている様子はない。それどころか、今までになく自信に満ちている。縋るような視線を感じたのだろうか、彼は何も言わず前を向いたまま私の手を握った。触れ合った箇所から、血の通う温度と慈しみが染み込んでいった。
「俺はいいと思いますけどねえ」
「ホークス」
「やーほら、考えてみても下さいよ、陛下。あなたがいなけりゃ俺は希少な有翼獣人として売買され続け、今も虐げられてたはずです。獣人への偏見なく俺を救ってくれたのは、エンデヴァーさん、あなただ。竜族だからって何が違うんです？」
ホークスは肩を竦めると、他意のない真っ直ぐな瞳で王を見据え、頬に笑いを作った。
「ま、このままじゃ埒が明かなそうなんで、この御方をお呼びしときました」
どこからともなく現れたその男は、頭巾のついた純白の毛織物のマントに身を包んでおり、今はずらした頭巾が襟元にひだをつくっていた。露わになった顔はやせ細り、目元は窪み、頬はこけている。しなびた金髪が風にたゆたい、海のような目は澄んでいて、眼光は深く重い。だが、物腰は穏やかだった。例えるならそう、英雄のように。
「やぁ、未来明るき少年少女たち」
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えとり(プロフ) - 瑞樹さん» 書き込みからお褒めの言葉までありがとうございます……！ゆったりとした更新ですが、応援していただけてとても嬉しいです^^ (2022年10月26日 20時) (
レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 文才があり過ぎて本当に尊敬します……。丁寧な描写がとても素晴らしいです！ 応援しています！ (2022年10月25日 19時) (レス) id: 943a21922c (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - ぴょんきちまるさん» 素敵な書き込みありがとうございます、その言葉に、私の心も嬉しさで痺れました…！続きもお楽しみください^^ (2022年10月15日 20時) (レス) @page22 id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょんきちまる - とても素敵な作品！読んでいて、凄く痺れました！わくわくしました。こんなにも次の話が楽しみで仕方ない作品に出会えて幸せです。 (2022年10月15日 11時) (レス) id: 94182d8a2a (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - enhy7さん» 書き込みとても嬉しいです…！体が浮いて飛び去ってしまいそうな、幻想的で素敵な曲のご紹介もありがとうございます。物語を引き続きお楽しみいただければと思います。 (2022年10月7日 19時) (レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えとり | 作成日時：2022年9月12日 10時
