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砕けていた破片が折り重なっていく。私は無意識のうちに弓を持つ手に力を込めた。
「殿下の言う化け物とは、竜のことですか」
ショート様は眼を伏せた。話すか話すまいかと迷うような間があったことを私は見逃さなかった。背筋に緊張を覚えながら、気軽さを装う。
「手紙には何が書かれていたのですか？ まさか、戦を始めるわけでもないでしょう」
「逆だ。竜族は人間と和平を締結するつもりらしい。竜は伝説じゃねえ、実在した」
「それなら、どうして、そんなに険しい顔を……」
「城の魔法使いが、森の中に今までなかった魔力を感知した。親父は……王は、竜族が高位の魔物を森に誘い込んだと思ってる。そんなときに和平を持ちかけてくれば、罠としか思いようがねえだろ」
「違う！」
だんだん声が大きくなってきた。多分、本当はこんなにあからさまには、話したくなかったから。はっきりしたことを聞きたくないような心残りが、私の感傷しやすい心に薄皮を張っていたから。拠り所をなくし不安に駆られ、頼る相手を見誤ったのかもしれないなどと言われたくはない。
胸中には雷鳴が轟いている。もう、これ以上我慢できなかった。その場を離れようとした。カツキさんのところへ、帰ろうとした。
慌てて身を翻そうとした私の腕を掴んで引き止めたのは、他でもない殿下だった。強い突風が吹き抜け、髪が舞い上がり、首元の噛み痕が露わになる。殿下の美しい顔は歪み、両眼は非難の色で揺れた。
「これは……A……っ！」
咄嵯に隠そうと伸ばした手を彼が握りしめる。私は息を止めて抵抗したけれど、何かに憑かれたような殿下の力から逃れることはできなかった。彼はこんなふうに言葉で敵わなければ力で押さえつけようとする人ではなかったはずだ。
ケロイドになった火傷が囲う、その瞳の奥にある感情を拾おうと強く見据えれば、やはり動揺が見え隠れしていた。目前にある憎しみに囚われて盲目になった者と同じ顔だ。魔法が使えない妬みと不信でヤケになっていた私と、同じ。そしてその矛先は、きっと彼の父なのだろう。
そのとき、地鳴りがしたかと思うと、足元の大地が揺れ始めた。
「っ結界が閉じる！」
殿下は私の腰に手を回し、物凄い力で引き寄せ、その反動で後ろへ飛び退いた。それまで立っていた地面に亀裂が走る。彼がかざした右手から青白く眩い光が飛び散り、魔法陣が現れた瞬間、周囲の景色が遠い向こうに縮んで見えなくなった。
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えとり(プロフ) - 瑞樹さん» 書き込みからお褒めの言葉までありがとうございます……！ゆったりとした更新ですが、応援していただけてとても嬉しいです^^ (2022年10月26日 20時) (
レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 文才があり過ぎて本当に尊敬します……。丁寧な描写がとても素晴らしいです！ 応援しています！ (2022年10月25日 19時) (レス) id: 943a21922c (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - ぴょんきちまるさん» 素敵な書き込みありがとうございます、その言葉に、私の心も嬉しさで痺れました…！続きもお楽しみください^^ (2022年10月15日 20時) (レス) @page22 id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょんきちまる - とても素敵な作品！読んでいて、凄く痺れました！わくわくしました。こんなにも次の話が楽しみで仕方ない作品に出会えて幸せです。 (2022年10月15日 11時) (レス) id: 94182d8a2a (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - enhy7さん» 書き込みとても嬉しいです…！体が浮いて飛び去ってしまいそうな、幻想的で素敵な曲のご紹介もありがとうございます。物語を引き続きお楽しみいただければと思います。 (2022年10月7日 19時) (レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えとり | 作成日時：2022年9月12日 10時
