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カツキさんは決して私を狩りに連れていこうとしない。
彼が私についてくるなと釘を刺したわけでも、私が同行したいと彼に願ったわけでもないけれど、とにかくそうなのだ。彼は私を狩りに連れていきたがらない。理由を問うことはしなかった。なにか一線を超えてしまうような、危うい境界に立つことになると、自分の心が警告してくるせいだった。
けれどもカツキさんが狩りに出かけている間、洞窟からごく近い範囲の中で私が散策することを、カツキさんは止めはしなかった。彼は無言で拒否もするし、また承認もする人なのだ。
私は洞窟の岩壁に手を這わせながら外に出ると、入り口の逆側に回り込み(穴の正面は崖になっており、カツキさんは恐ろしいことに、いつもこの崖から飛び降りて姿を消す。怖くて下を覗き込むことは未だできない)、なだらかな斜面を下って森に降り立つ。
私は懐かしい友達に向けるように、親しい視線を木々と交わす。腰に下げたポーチの中身を確認すると、「よし」と一声、森の中を進んでいく。日に日に私は遠くまで足を伸ばすようになっていた。川辺、丘陵地、湿原。湿原は、太陽が葦の上に昇ると、まるで大きく広がる水面のように見えた。
新たな発見を目指してぶらりとあたりを回った私は、美しい風景にすっかり満足し、洞窟へと引き返す道に戻る途中、ふと視界の端に映った白いものに足を止める。
「花……？」
それは小さな花弁の健気な、百合に似た白い花だった。湿原の水面にひっそりと咲く純白の姿が可愛らしい。これもまた、森の外では目にしたことのない植物だった。
誰かが意図的に咲かせたものなのか、自生したものなのかはわからないけれど、私の知らない効能があるかもしれない。帰ってカツキさんに聞いてみなくちゃ。もっと近くで見ようと一歩だけ歩み寄ったその時、足元の葉っぱの影から、何かが飛び出した。
「ゲコ」
「ぎゃっ」
顔面めがけて跳躍したソレ――カエルに飛びつかれ、私は驚きのあまり足を滑らした。滴が舞い上がる。またしくじった。カツキさんごめんなさい。自分の鈍臭さをすっかり勘定から外していた。水浸しになるだろう1秒後に思いを馳せ、私は目を閉じた。
背中を支える、腕の感触。
「危ねー！ 間に合ってよかったぜ！」
灼熱に燃える髪と同色の、猫のような縦長の瞳孔、混じり気のないからりとした笑顔。
森に迷い込んでから初めて、私はこの日、カツキさん以外の人間と遭遇した。
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えとり(プロフ) - 瑞樹さん» 書き込みからお褒めの言葉までありがとうございます……！ゆったりとした更新ですが、応援していただけてとても嬉しいです^^ (2022年10月26日 20時) (
レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 文才があり過ぎて本当に尊敬します……。丁寧な描写がとても素晴らしいです！ 応援しています！ (2022年10月25日 19時) (レス) id: 943a21922c (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - ぴょんきちまるさん» 素敵な書き込みありがとうございます、その言葉に、私の心も嬉しさで痺れました…！続きもお楽しみください^^ (2022年10月15日 20時) (レス) @page22 id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょんきちまる - とても素敵な作品！読んでいて、凄く痺れました！わくわくしました。こんなにも次の話が楽しみで仕方ない作品に出会えて幸せです。 (2022年10月15日 11時) (レス) id: 94182d8a2a (このIDを非表示/違反報告)
えとり(プロフ) - enhy7さん» 書き込みとても嬉しいです…！体が浮いて飛び去ってしまいそうな、幻想的で素敵な曲のご紹介もありがとうございます。物語を引き続きお楽しみいただければと思います。 (2022年10月7日 19時) (レス) id: 3ae1089047 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えとり | 作成日時：2022年9月12日 10時
