その恋は、最初で最後の恋だった。

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２０＊１年、１月２４日 曇り

「くっだらない」


持っていた少女漫画をパタンと閉じて、あたしは呟く。

先日の誕生日で、兄から送られてきた最近流行りの漫画。
ドラマ化もされたらしい。
感動物語、らしいけど、あたしには涙の一粒も出てこない。

なぜなら、主人公の岡島蓮は平凡で目立たないクラスのモブ。
それなのにクラスの一軍、「野村羽並」に密かに想いを寄せられる

ヒロイン野村羽並は天然で鈍感。すぐに感情が表に出る。
そして密かに人気もあり、裏で取り合いもされているらしい。
いわば王道ヒロイン。あたしとは大違い。

蓮は一度羽並に告白されたが、断る。
しかし時間が経つとともに蓮の方も羽並に想いを寄せて行く。
けどその想いは告げれぬまま、羽並に不死の病が見つかってしまった。
蓮はどうしても彼女を助けたくて、病気になった羽並を助けようと足掻く。
付き合ってもないくせにね。

まー、ここまではいいよ。普通の少女漫画だもん。

でも、何もできなかった蓮は最後にと思い羽並の病室に足を運ぶ。
そこで涙を流しながら言うんだ。
「君が好きだった」って。

その時から羽並の病気はドンドン良くなって、ついには完璧に治り蓮とゴールイン！

不治の病じゃなかったのかよ。


「……くだらない」

「うるさい」


二度目に呟くと、目の前にいるのあの子が言った。

本から少し顔を上げ、怪訝そうにこちらを睨んでいる。


「だってこの漫画、ありえないんだもん」

「漫画なんてそんなもんでしょ。夢と願望の固まり」

「……そんなこと言って、嫌われない？」

「ハ？お前に言われたくない」

「辛辣だなぁ、君も読む？」


そう聞くと、すぐに本に顔を落として彼は言った。


「読まない」

「感動作らしいよ、この「君のためなら悪魔にだって魂を売る」。あたしはゼンッゼン好きじゃないけど」

「……シツコい」

「シツコいのって、あたしのいいところだと思うんだ」

「俺は悪いところだと思う」


そんな言葉をまるっきり無視し、あたしは彼に何度も読めと進める。
泣かないのはあたしだけじゃないって自己満したかったんだ。

ついに彼の方が折れて、漫画を読み始めた。

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