不思議な夜、幸せな日々。 ページ3
「あの、さ」
「んー?」
「光、あの、なんか、そういう気分だから言おうと思うんだけどさ」
お互い、顔を見ることはしなかった。
「JUMPとして歩き出してから俺の中で絶対に譲れないものができたんだ。守るべき存在……とも言うのかな。それは当時も今も変わらず思ってる。光は昔から一緒にいるし、手放さなきゃいけないモノもあったし、逆に二人で守ってきたモノもあると思う。でも、なんていうか……、お前もさ、俺の中では守るべき存在の一人なんだよ。うん、そうなんだよ。……だからさ、俺、ずっと守るよ。それで、俺がお前を、――お前らを、一生かけて幸せにしてやる」
そう言い切った薮は手に持った缶を煽る。
いやいやお酒じゃないんだから、というツッコミはしないでおいてやった。なんて上から目線なのも変だけど、恥ずかしいんだよ、普通に。
「……俺もね、奇遇なんだけど、同じこと考えてた。俺がJUMPを一番楽しくて幸せなアイドルグループにしてやりたいって、思ってた。でも、なんだろうな。なんか、幸せだ、俺。なんかさ、なんかさぁ……俺、こんなに幸せで、いいのかなぁ」
きっと、声は震えていたと思う。
「いいんだよ、それくらいが丁度いいって」
「丁度いいって、どーいう意味だよ」
「幸せすぎることなんてないんだ。お前が勝手にそう思ってるだけで、本来、光に与えられるべき幸せが与えられてるだけなんだから」
「……お前さぁ、俺を泣かせる趣味でもあるの?」
「わりとね」
「趣味悪ぃ」
ポロッと涙が落ちた時、やっと薮の顔が見れた。ほんのりと赤い鼻がちょっと不格好だった。
「約束だかんな」
「約束?」
「おう。……絶対一生かけて幸せにしろよ。俺も、めいっぱい幸せにしてやるから」
「……任せとけ」
お互い意味ありげに含み笑って缶を煽る。会話しつつもくるくると回し続けたおかげか、中のコーンが一つも残ることなく飲みきれた。
今日は最高に幸せな日だ。
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作者名:北斗千聖-Hokuto Chise- | 作成日時:2017年11月28日 14時