検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:3,729 hit

不思議な夜、幸せな日々。 ページ2

その日は妙に空気が澄んでいて、都会の中から抜け出してしまったような、不思議な世界に俺と薮はいた。

「今日スゲー寒ぃね」

コートにマフラーを身につけた薮がふるふると震えながら空を見上げる。俺もつられて空を見上げると、今日はやけに星が良く見えた。

「コーンポタージュ、飲みてぇな」
「あ、俺も飲みてぇ」
「すぐそこの公園の傍に自動販売機無かったっけ?」
「んー、そう言われればあったっけな」
「ジャンケンしようぜ」
「マジかよ」

俺が拳を出せば、楽しそうに笑いながら拳を出してくれる。こういう所は昔と何も変わらない。

「最初はグー、ジャンケン――……ッ!!」



公園のベンチに座って待つこと五分。両手に缶を持った薮が小走りで戻って来た。

「ご苦労」
「クッソ〜……」
「いやー、タダポタージュは良いもんですなぁ」
「タダポタージュの響きクソムカつく」

ジャンケンに負け、加えて奢るハメになった薮は少し拗ねた顔をして俺の隣に座った。

「っあぁ〜……あったけぇ……」
「なんだよその声、ジジイか」
「光も飲めば俺の気持ちが分かるって」
「えぇ〜? っあぁ〜……うめぇ……」
「そら見ろ」

クックック、と笑い声がしたけど、それを無視して缶を傾ける。開封したてのコーンポタージュが食道から胃に染み渡り、痛いような熱さが広がる。それがちょっと気持ちいい。

「この前まであんなに汗ダラダラだったのになぁ」
「だなぁ。気が付きゃ年の瀬目前だし」
「時の流れはホントに早い」
「まあ、なんたって俺らもとうとう10歳になっちゃったもんね」
「……長かったような、あっという間だったような……そんな10年だったな」

二人してしみじみと懐古する。当時は本当に大変だった。まあ、今も大して変わらないけど。

「みんなよくここまで成長したな、って思う時ない? 当時は想像もしてなかった、みたいな」
「あるある。特に圭人とかな。あいつはスゲーぞ」
「確かに」

ハハハ、と笑う二人の声が空に溶ける。
なんだか今日はいつに増して素直になれている気がする。やっぱり、不思議な夜だ。

不思議な夜、幸せな日々。→←注意事項



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
10人がお気に入り
設定タグ:やぶひか , ゆとけと   
作品ジャンル:その他
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:北斗千聖-Hokuto Chise- | 作成日時:2017年11月28日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。