過去 ページ7
SIDE skt
遡ること10年前。
俺が15歳、Aが5歳の時。
あの日、街のお祭りがあって、Aを連れて行ったんだ。
りんごあめとか、わたあめとか、Aが「欲しい」って言ったものは全部買った。
大好きだったから。
でも、その帰り道。
俺が取ってあげたスーパーボールで遊んでいたAが、ボールを追いかけて道路に飛び出したんだ。
鳴り響くブレーキの音。
周囲から聞こえる悲鳴。
硬直するA。
もう無我夢中で飛び出してAを突き飛ばした。
それで俺も避けようと思ったけど、そんなに甘くなくて。
Aの身体を突き飛ばしたと同時に、俺の身体も吹っ飛ばされた。
数十メートル先のガードレールにぶつかり、感じたことの無い痛みが身体中に走った。
視界に映った真っ赤な水溜り。
その向こうには、唖然として俺を見るA。
あぁ、無事だったんや。
「…A…ごめん、なぁ…」
『…っ…!お、にい、ちゃ…ど、したの、まっかっか、おきて、ね、おうち、かえろう、よ、ねぇ、おにいちゃ、』
よたよたと俺に近付いてくるAに手を伸ばし、引き寄せた。
『…?おにいちゃ、つめたい…あったかくない…なんで?まっかっかなの、なんで?』
「っ…A…ほんま、ごめん…お兄ちゃんは、もう、だめや…ごめんな、ひとりにしてもうて…ご、めん…っ…」
不安そうな顔を見て、謝ることしか出来んかった。
『ごめんってなぁに…?おうちかえろうよぉ…おにいちゃん…う、ああああん』
抱きしめて、安心させたいのに。
大丈夫やで、ほな帰ろかって言って家に帰りたいのに。
身体が、言うことを利かない。
動いて、くれない。
段々ぼーっとしてきて、泣きじゃくるAの顔もぼやけてきた。
Aの薄ピンクの浴衣が、鮮やかな赤で彩られていく。
「…さん!き…えま…か!?…さ…!」
最後に聞いたのは、救急隊員と、Aの泣き声だった。
その後、Aが心配で成仏出来ずにいた。
様子を見に行けば、塞ぎ込んで泣いているA。
その手には、お祭りの時に撮った写真が、ところどころ俺の血で赤黒くなった写真が、握られていた。
いつ行ってもそうだったから、俺は____
「___記憶を、消したんや。俺に関する記憶を、全部」
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お気に入り、気付いたらたくさんいらっしゃって感激しました…!
ありがとうございます!
勉強しつつ更新も頑張ります!
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年6月27日 20時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
恋花レンカ - しゅあ。さんお誕生日おめでとうございます!いい年になるといいですね! (2019年12月2日 17時) (レス) id: 8916eccc14 (このIDを非表示/違反報告)
恋花レンカ - すごくドキドキして、面白いです!応援してます! (2019年11月27日 1時) (レス) id: 69d112bb58 (このIDを非表示/違反報告)
ミト - 初コメ失礼します。すごく面白かったです!更新頑張ってください。 (2019年11月25日 0時) (レス) id: d0ac5e5cac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅあ。 | 作成日時:2019年10月26日 0時