烏は星を守りたい ページ10
我は、主に無理を言って許可を貰い、天鉄刀の元へやってきた。
妖精達に囲まれる天鉄刀を見ると、傷はほぼ治りかけている。この様子なら、もう四半刻(約30分)もかからないだろう。
傷だらけの天鉄刀が、たった一振りで発見されたと聞いた時、心の臓が止まるような衝撃を受けた。
どの刀よりも幼く、敬語が苦手で、慣れない戦にも一生懸命に取り組む、素直で純粋な、大切な我が子のような存在。
苦しそうに眉間に皺を寄せる、安らかとは言えない寝顔を見ると、心が苦しくなる。
「……ます、ぁ……め、な……」
僅かに苦しそうに呻きながら、何かを呟いた。
(……確かこやつは、主の事をマスターと呼ぶのであったな)
そう思い至って、するりと髪を撫でた。
『マスター、ごめんなさい』
そう、聞こえた。
何に対して、謝っているのだろうか。
「……もう良い。お主は十分苦しんだであろう」
そう労いながら、何故か消えない傷跡が無数にある左手首をそっと撫でた。
そのまま傷が塞がっていくのを見守っていると、予想通り、四半刻程度で傷は塞がり、天鉄刀は目を覚ました。
「目が覚めたか」
「……こがらす、まるさん」
「ああ」
そうつぶやくと、少し困惑したように辺りを見回し、慌てて起き上がろうとする。
「……あの、すみません、俺……」
「なに、謝る必要はない。もう少し横になっておれ」
胸元を軽く押してそう制すると、少し戸惑ったあと、おとなしく横になった。
「良く頑張ったな。後は、この父に任されよ。子を守れずして、父は名乗れぬ」
そう言って、天鉄刀の、少し癖のある髪を撫でた。
天鉄刀は何かを言いたそうにしていたが、悲しそうな、思いつめたような表情をして黙ってしまった。
「お主も、我にとっては我が子のように大切な存在なのだぞ」
そんな顔をなんとか晴らそうと発した言葉を聞いた天鉄刀は、何故か、ぐっ、と言葉に詰まり、暫くして無理に笑ったような不恰好な笑顔を浮かべた。
嗚呼、そのような表情をさせたい訳では、無かったのだが。
どうやら……思っていたより、天鉄刀の心の傷は深いようだ。
そんな天鉄刀を見ているのがあまりに辛くなり、主を呼んで来よう、などと最もらしい理由をつけて、手入れ部屋から逃げてしまった。
(……これでは、父とは名乗れぬな)
人としてはまだ未熟な己を自嘲しながら、主の元へ向かった。
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時雨 - 杜若てふさん» はい！！どんだけゆっくりでも大丈夫です！応援してます(*`ω´*) (2016年12月4日 21時) (
レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
杜若てふ(プロフ) - 時雨さん» コメントありがとうございます！超スローペースですが、応援してくださると嬉しいです (2016年12月4日 20時) (レス) id: 6788579c01 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - すごく面白いです！続き楽しみに待ってます(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年12月3日 16時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杜若てふ | 作成日時：2016年10月18日 8時
