きっと“元の彼”は一等星 ページ11
どうしてこうも、上手くいかないのだろう。
『お主も、我にとっては我が子のように大切な存在なのだぞ』
小烏丸さんのその言葉を聞いて、ずきりと胸の奥が痛んだ。
俺は天鉄刀ではないんです。
そう言いたいのを堪えて、笑顔を作って、後悔した。
小烏丸さんが、悲しそうな、苦しそうな顔をした。
主を呼んでくると言って去っていく小烏丸さんの背中を、見守る事しか出来なかった。
(俺は、彼から、子供同然の存在を、奪ったのか)
ぐるぐると後悔が押し寄せる。
俺は、パパ上とかとと様とか、気軽に呼んではいけない。
俺は、あの時、死を選ばなければ、いけなかったんだ。
俺は、どれだけの人間を不幸にすれば気が済むんだ！
そう、心の中で、自分に向かって吠えた。
母さんは、俺を守ろうとして消えない傷を負った。
増田さんは俺のせいでおかしくなった。
俺は、俺を慕ってくれた刀剣男士の命を奪った挙句、天鉄刀の身体を奪い、嘘をつく。
亀甲貞宗が怪我をしたのだって、俺に関わったからだ。
そもそも、天鉄刀というのは、俺とは全く違う奴なんだ。
『マスター、今日もよろしくっす！』
まっすぐで、
『戦を知らない俺にだって、勝ちたいって意思くらいあるんだよ！』
一生懸命で、
『俺、もっと強くなりたいっす』
純粋で、
『4億年分のエネルギーを食らいなぁ！』
それでいて、自信に満ち溢れている。
平成の名工が、鉄隕石を使い、試行錯誤の末に完成させた、まごうことなき名刀。
それが天鉄刀という刀であり、誇り高き現代の名刀に宿った刀剣男士なのだ。
他人を不幸にした俺とは、全く違う。
それなのに、俺は……
がり、と左手首に爪を立てた。
こつこつ、と控えめにノックの音が響いた。
「審神者さんですよー。入っていいですかー？」
間延びした、少し舌ったらずな声が襖越しに聞こえた。
爪を立ててしまった左手首を、服の裾を伸ばして隠し、布団から出て正座した。
「はい、大丈夫です」
これからどうすればいいのか答えが出ないまま、審神者と向かい合った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
時雨 - 杜若てふさん» はい！！どんだけゆっくりでも大丈夫です！応援してます(*`ω´*) (2016年12月4日 21時) (
レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
杜若てふ(プロフ) - 時雨さん» コメントありがとうございます！超スローペースですが、応援してくださると嬉しいです (2016年12月4日 20時) (レス) id: 6788579c01 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - すごく面白いです！続き楽しみに待ってます(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年12月3日 16時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：杜若てふ | 作成日時：2016年10月18日 8時
